研究課題/領域番号 |
14J08015
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山上 龍太 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | RNA / RNA修飾酵素 / tRNA / 葉酸 / チミジル酸合成 / 翻訳機構 |
研究実績の概要 |
本研究は、高度好熱菌の葉酸代謝経路において、DNA合成系とRNA修飾系は、メチレンテトラヒドロ葉酸の代謝を介して互いに制御し合っているのではないかという仮説を検証することを最終目的として据えている。 平成26年度の本申請計画では、(1)tRNA (m5U54) methyltransferase (TrmFO)の遺伝子破壊株における、tRNA修飾含有量の変化と影響を確認する。(2)trmFO遺伝子破壊によるDNA合成活性の変化を確認する。(3)細胞内の葉酸依存性メチル化酵素群の量的経時変化を確認する。という3つの目標を設定した。 (1)の目標を達成するため、まずは、固相化DNAプローブ法を用いて、細胞から採取したtRNA混合物から特定のtRNAを単離した。単離したtRNAを用いてヌクレオシド分析を行ったところ、trmFO遺伝子破壊株では、いくつかの修飾ヌクレオシド含有量が変化していることを見出した。結果的に、この修飾ヌクレオシド含有量の変化は、低温環境下でタンパク質合成速度を低下させていることを突き止めた。 (2)trmFO遺伝子破壊株のDNA合成活性を調べるために、RIを用いた培養実験を行った。培養後の菌体に由来するゲノムDNAを分析することによって、trmFO遺伝子破壊株のほうがDNA合成活性が高いことを明らかにした。 (3)細胞抽出液中の葉酸依存性メチル化酵素群(TrmFO, チミジル酸合成酵素, セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)の存在量を明らかにした。 このように、当初設定していた目標を達成することができたため、予定を前倒しして、試験管内におけるTrmFOとチミジル酸合成酵素の競争実験を行った。その結果、TrmFOの酵素活性は、ThyX存在下で抑制されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた目標を予想よりも短期間で達成することができたため、来年度以降に予定していた実験に着手できた。また、本計画を遂行する上で必要不可欠であった固相化DNAプローブ法の改良を行った。この結果は、国際学術誌に共同著者として論文を掲載するに至った。よって、本研究計画は、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に計画していた「試験管内におけるチミジル酸合成酵素の酵素活性測定系の確立と、TrmFOとの競争実験」は、平成26年度にすでに着手しており、仮説を支持する結果が得られている。しかしながら、ThyXの酵素活性がTrmFOの存在によって抑制されることは、未だ確認できていない。したがって、平成27年度は、ThyXの酵素活性がTrmFOによって、阻害されるかを確認する予定である。ThyXの酵素活性測定法の開発は、平成26年度にすでに完了しており、酵素反応の最適条件を見つけることに成功している。よって、短期間で研究計画を遂行できるものと考えられるが、生体内におけるThyXの基質(dUMP)量が不明であるため、dUMP濃度の検討が必要であると考えられる。場合によっては、細胞内のdUMP濃度を検討する手法の開発に着手する。
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