研究課題/領域番号 |
14J08025
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 真人 千葉大学, 融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 単電子デバイス / 光誘起電荷移動 / 分子エレクトロニクス / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
銀ナノ粒子(AgNP)をクーロン島に用いた単電子トランジスタ(SET)の作製と動作実証を行った。オクタンジチオール/ヘプタンチオール被覆銀微粒子(AgSH)は、ミリスチン酸被覆銀微粒子分散溶液(AgMy)にC7T、C8DTを添加・撹拌し、被覆置換することで作製した。鎖長の短い分子への被覆置換により、トンネルコンダクタンスが向上することを期待した。さらに、Au-S結合を介してAgNPが金電極上に強く吸着することを狙いとした。AgSH分散溶液にナノギャップ電極基板を浸漬することで、SETを作製した。なお電気測定は、低温プローバー内(13 K, ~5×10-6 Pa)で行った。被覆分子の調整により、SETのコンダクタンス向上と素子作製の歩留まり向上(4 % ⇒12 %)させることに成功した。また、低温で観察されたスタビリティダイアグラムから帯電エネルギーは100 meVとなり、AgNPの粒径から見積もられる82 meVと同程度であり、AgNPがクーロン島として機能し、SET動作することを明らかにした。 上記の手順を用いたAgNP-SETに対して銅フタロシアニン誘導体(ttbCuPc)を少量添加し、分子フローティングゲートSET(MFG-SET)を作製し、その光応答性を調べた。波長500 nmの光照射下のスタビリティダイアグラムが暗状態と比較して正側へシフトした。これは、クーロン島のポテンシャルシフトを示しており、狙っていたMFG-SETによる光応答を観察することに成功した。以上から、MFG-SET機構が基盤となるSETによらず有力であることを示せた。一方、CuPc doped AuNP-SETで観察されていたクーロン島のポテンシャルシフトとは逆極性であり、材料によって光特性を制御できることを示唆する結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな材料を用いた分子フローティングゲート単電子トランジスタ(MFG-SET)の研究に着手し、その作製工程の確立と、動作実証を行なった。銀ナノ粒子(AgNP)を用いた先行例はなく、SET動作を発現させることに想定よりも多くの時間を費やしてしまった。そのため、予定していた新たな測定系などを構築する時間が足りなかった。しかし、得られた光応答特性は、本課題の中心となるMFG機構が材料によらず有力であることを補強し、さらに材料によってその光特性を制御可能であることを示唆する結果を得られたことは大きな進展であるといえる。当初狙っていたようには研究を進められなかったが、来年度に向けての土台作りが行えたので、トータルを考えれば順調に進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度で得られた結果を土台とし、分子フローティングゲート単電子トランジスタ(MFG-SET)の光応答について詳細に調べ、電子素子としての応用展開を示すことを目指して研究を行っていく。クーロン島には、銀ナノ粒子(AgNP)と金ナノ粒子(AuNP)の双方を用いる。クーロン島のポテンシャルシフトの極性や波長依存性の比較から、AgNPの局在型プラズモン共鳴が光応答に与える影響を検証する。電極は、従来のエレクトロマイグレーションを用いたナノギャップ電極だけでなく、無電解金メッキ法を用いたナノギャップも新たに取り入れてSETを作製していく。無電解金メッキによるナノギャップ電極は共同研究先で作製し、それを用いたMFG-SETの光応答は申請者が行なう。ギャップ長を化学プロセスにより制御し、安定したSET特性を得ることで、光応答を詳細に測定できることを期待している。
|