研究実績の概要 |
放射光施設やX線自由電子レーザー施設では,単位面積当たりの強度が非常に高い軟X線が発振されている.そして,その集光素子としてミラーを利用することで,色収差がなく,高い効率で軟X線を集光可能である.そのミラーの中でも,回転体形状のミラーは,大開口であり,理論的に軟X線を10 nm以下に集光可能である.しかしながら,その作製は非常に困難であり,これまでに,回折限界集光可能な回転体ミラーは開発されていない. [前半] SPring-8 BL25 SUのビームラインに合わせて回転楕円ミラーの光学系を設計した.ミラー形状は,内径5.6-9.7 mm, 長さ40 mmとした.本研究では,ミラーと逆形状を有するマスターマンドレルを高精度に作製し,その表面を転写する,という2段階の工程で作製した.集光実験の結果,高精度マンドレルに起因して、軟X線を従来では達成できなかった200 nmサイズに集光することに成功した. [後半] これまでに,周方向の形状プロファイルの高精度計測システムと長手方向の形状プロファイルの高精度計測システムを確立した.しかしながら,周方向に異なる位置の長手方向の形状プロファイルを計測するためには置き直しが必要であり,計測開始位置に誤差が生じる. そこで,今年度は,真円度測定機を改造し,前年度に開発した計測手法を導入することで,1台の装置上の一度のアライメントでマンドレルの周方向形状プロファイルと長手方向形状プロファイルの両方を計測可能とした.そして,3次元形状偏差分布を作成した.さらに,2年前に開発した加工装置を用いて,3次元的な形状修正加工を行うことで,本システムの有用性を示した.これらの結果,急峻な非球面形状を有するマンドレル表面を数値制御で確実に形状誤差RMS 2 nmの精度で作製可能とするシステムが確立した.
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