研究課題/領域番号 |
14J08052
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
道上 健一 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | C-H活性化 / C(sp3)-H結合 / 二酸化炭素 / カルボキシル化 / 遷移金属錯体 / ロジウム / メタラサイクル |
研究実績の概要 |
平成26年度は、二酸化炭素に対する反応性を確認するため、8-メチルキノリンおよび種々の金属錯体(Pd(OAc)2や[Cp*RhCl2]2など)から各種メタラサイクルを調製し、二酸化炭素ガス雰囲気下、種々の塩基を用いて反応を行った。その結果、8-メチルキノリンのベンジル位にPd(II)が結合したパラダサイクルを基質とした場合、目的のカルボキシル化体は得られなかったが、ベンジル位にRh(III)が結合したローダサイクルを基質とした場合、Cs2OCO3やKOtBuを塩基として用いることで、8-メチルキノリンのベンジル位がカルボキシル化された目的物が少量ながら得られることが明らかとなった。さらに、カルボキシル化されたローダサイクルが少量ながら同時に得られた。また、8-メチルキノリンおよび塩基のみでは反応が一切進行しないことも明らかとなっている。 反応機構については、C-Rh(III)結合に対して二酸化炭素が挿入する機構が考えられる一方で、ローダサイクルを形成することでベンジル位C-H結合の反応性が向上し、塩基による脱プロトン化が進行した可能性、あるいは、ロジウム(I)カルベノイド中間体を経由して二酸化炭素との反応が進行した可能性が示唆された。すなわち、反応機構の観点からも、C(sp3)-H結合ならではの、新たな形式のC-H結合カルボキシル化反応となり得るものと考えられる。現在、収率向上に向けた反応条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、C(sp3)-H結合の切断を伴って合成することが可能なメタラサイクルを種々合成し、二酸化炭素によるカルボキシル化反応の段階について検討を行った。すなわち、8-メチルキノリンのベンジル位C(sp3)-H結合の活性化を経て合成可能なパラダサイクルおよびローダサイクルを調製し、塩基存在下、二酸化炭素との反応を検討した。その結果、パラダサイクルを用いた場合は目的の化合物は得られなかったものの、ローダサイクルを基質とした場合に、低収率ながら目的のカルボキシル化体が得られることがわかった。現在、収率向上のため、反応条件の検討および反応促進のための添加剤の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、8-メチルキノリンから調製したローダサイクルを用い、二酸化炭素によるカルボキシル化反応の検討を引き続き行う。収率の向上が見込まれない場合は、塩基による脱プロトン化をより容易に受けるような基質を設計し、反応に用いる予定である。また、本反応ではカルボキシル化されたローダサイクルも同時に得られているため、触媒反応の実現に向け、C-Rh結合を切断し触媒活性種を再生させるような添加剤を検討する。 一方、ベンジル位C(sp3)-H結合のみならず、末端アルケン化合物のアリル位の活性化にも取り組む予定である。すなわち、カルボキシル化ののち金属カルボキシラートから触媒活性種を再生するため、塩基やトランスメタル化剤等の添加剤の検討を行い、触媒的C(sp3)-H結合カルボキシル化反応の開発を達成すべく研究を進める。
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