ゲノムに記されている遺伝情報を読み解くには、多くの真核生物のゲノムの主要な構成要素であるトランスポゾンを理解する必要がある。しかし、これらのトランスポゾンがゲノム中でどういった役割を果たしているのかは未だにはっきりわかっていない。そしてこれはトランスポゾンの進化プロセスがわかっていないことが大きな原因である。そこで本研究では、植物界に広く分布するAu SINEと呼ばれるレトロトランスポゾンをモデルにし、比較ゲノム解析などによってこのトランスポゾンの進化の歴史を明らかにしていくことで、トランスポゾンの進化プロセスを解明していくことを目的に研究を行ってきた。そこで、すでに解読されている数十種の植物のゲノム配列を用いて様々な解析を行い、このAu SINEレトロトランスポゾンの詳細な進化の歴史を再構築することができた。特に、遠く離れた種間で配列が非常に似ているという状況が、水平移動などを考慮せずとも、通常の垂直伝搬での進化プロセスで十分に説明できることがわかった。そしてこれらの結果を踏まえたトランスポゾンの進化モデルを提唱することができた。現在この成果を記した論文を国際誌に投稿中である。
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