研究課題/領域番号 |
14J08109
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 耕太郎 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 自立支援 / 生活困窮者 / 社会政策 / 社会福祉 |
研究実績の概要 |
近年の労働市場の変容とそれに対応する政策・制度の変化との連関を分析することで、現代日本の社会政策の構造に迫り、必要な社会政策の在り方を検討していくことを目的とする。特に自立支援政策・生活困窮者支援に焦点を当て研究してきた。こうした目的に即し、本年度においては、以下の課題に取り組んだ。 1.社会政策に関する文献研究 2.自立支援機関(生活困窮者自立支援)へのヒアリング調査(計4団体) 3.その他(研究会等への参加による情報収集、論文の執筆など) ■調査研究の詳細 現代の社会政策の構造とその有効性を検討するために、自立支援政策の制度と運用の実証研究を行ってきている。本年度は、生活困窮者自立支援事業の本事業がスタートしたこともあり、下半期を中心に事業の実施主体に対し、ヒアリング調査を実施してきた。 ヒアリング調査による研究の結果として、①生活困窮者自立支援制度と生活保護制度との「棲み分け」は、生活保護の漏給問題によって機能不全に陥っていること、②生活困窮者自立支援制度の相談員は、第三者的な助言や情報提供によって、「要保護者」を生活保護制度へと円滑に繋ぐ役割を果たしうること(但し、支援員の専門性や実施団体の方針次第では、こうした役割を果たしえないことには留意が必要である。)③継続的な自立支援を受けるためには経済的な裏づけが必要であり、生活困窮者が自立支援メニューの利用から排除されていること、④就職が決定してもワーキングプアから抜け出せていないことや、就職決定者の一定割合が早期に離職していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、生活困窮者自立支援事業の実施団体(4団体)を主な対象として、ヒアリング調査を実施してきた。その結果、上述した通りの事実発見があり、論稿として成果を発表するところまで研究が進展してきた。 また、本年度の調査の実施に伴って、全国各地の生活困窮者自立支援の実施団体との信頼関係や協力関係が作れており、今後の研究の円滑な進行が期待できる。 さらに、実証研究だけでなく、社会政策や自立支援政策にかかわる文献研究や理論研究も進めてきており、実証研究と理論研究を有機的に結びつけることのできる段階にまで辿り着いた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、これまでの文献研究や予備調査の結果を踏まえて、本格的な調査研究を実施する。具体的には、生活困窮者自立支援の実施団体に対するヒアリング調査を継続し、生活困窮者自立支援事業の運用実態を明らかにする。また、実施団体だけでなく、生活困窮者自立支援事業の利用者の実態についても調査する。生活困窮者自立支援事業の利用者像を明らかにするとともに、利用者が自立支援事業を経て、どのような仕事に就いているのかなどを詳細に明らかにする。利用者の就職率や就職者数は既に公表されているが、その内実(企業規模、雇用形態、雇用期間、賃金、労働時間等)は明らかになっておらず、本研究でそれを明らかにすることの意義は大きいと考える。 以上より、次の通り、研究を進める 上半期:文献研究(社会政策、就労支援政策について)、実施団体へのヒアリング調査 下半期:利用者の実態調査、補足調査、研究成果のまとめ・報告
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