研究課題/領域番号 |
14J08178
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
村尾 愛美 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 特異的言語発達障害 / 自然発話 / 誤用 |
研究実績の概要 |
従来から、言語の困難さが持続することが特異的言語発達障害 (specific language impairment:SLI) の特徴として知られている。筆者はこれまで、日本語を母語とするSLI児2例の約10年にわたる自然発話データを用いて、格助詞の誤用を中心に検討してきた。本研究では、新たに時制、アスペクト、受動文に視点を当てた検討を行うことによって、これらが日本語を母語とするSLI児の早期発見に繋がる心理言語学的指標となりうるかどうかを明らかにすることを目的とする。今年度は、日本語を母語とするSLI児2例の自然発話における、1.格助詞の誤用、2.時制の誤用、3.アスペクトの誤用の検討を行った。
1.格助詞の誤用:SLI児2例の自然発話における格助詞の誤用の持続性を検討した結果、2例の誤用率は著しく低下するものの、困難さは持続している可能性が示唆された。この結果については査読のある学会誌に投稿し、掲載された(特殊教育学研究第52巻3号)。 2.時制の誤用:SLI児2例の自然発話にみられた動詞における時制の誤用のタイプと誤用率を検討した結果、2例の自然発話に観察された誤用はすべて時制標示(「る」や「た」)の脱落ではなく置換であった。また、SLI児2例の誤用率は英語のSLI児の誤用率に比して著しく低かった。この結果を日本特殊教育学会第52回大会で発表した。さらに対象児を増やし、SLI児7名の自然発話を分析した。この検討においても同様の結果が得られ、これについては、査読のある学会誌の英語版(Journal of Special Education Research)に投稿中である。 3.アスペクトの誤用:アスペクトにおいても時制と同様の結果が得られるのかどうかを検討した結果、時制の誤用と同様の結果が得られた。この結果については、第59回日本音声言語医学会総会・学術講演会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1.時制の誤用、2.アスペクトの誤用、3.受動文の誤用が日本語を母語とするSLI児の早期発見に繋がる有効な指標となりうるかどうかを明らかにすることであった。 今年度は、SLI児2例の自然発話における1.格助詞の誤用、2.時制の誤用、3.アスペクトの誤用の検討を行い、1.については査読のある学会誌へ投稿し掲載された。2.については、学会発表をし、データを増やして査読のある学会誌へ投稿中である。3.については、学会発表を行った。当初の研究計画では、受動文の誤用も検討する予定であったが、格助詞の誤用の持続性の検討を行ったため、受動文の誤用については現在データ分析中にある。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これからの研究では、まず、SLI児2例の自然発話に観察された受動文の誤用について検討を行う。次に、多数例を対象とした実験的検討を行う。SLI児2例の発話の検討から得られた結果を踏まえ、実験課題を作成し、学齢期のSLI児及び定型発達児に課題を実施する。このことによって、日本語を母語とするSLI児の言語の特徴をより明確に捉えることを目的とする。
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