1.イメージングプレート(IP)解析による稲ワラ中の放射性物質分布状況. 2011年3月のフォールアウトの影響を直接受けた稲ワラと、2014年に収穫された稲ワラでは、放射能の分布状況が明らかに異なった。そのIP像から前者は、Adachi ら(2013)が報告した、水に不溶のセシウム合金が付着している可能性が示唆された。 2.2010年収穫稲ワラ(2011年のフォールアウトの影響を受けた稲ワラ)からのセシウム溶出. ナノサイズに粉砕した稲ワラを、水に浸漬すると、セシウム溶出率は1~2%であった。次に、白色腐朽菌による植物細胞壁の腐朽処理や、様々な溶媒による熱処理を行ったところ、最高で20%程度の放射性セシウムが溶出されたが、顕著な効果は得られなかった。 3.2014年収穫稲ワラ(土壌からのCs吸収により汚染した稲ワラ)からのセシウム溶出. 実用化を想定し、粉砕を行うことなく、稲ワラからの放射性セシウムの溶出を試みた。水に浸漬した稲ワラ(対照区)は、70%程度の溶出にとどまったが、複数の溶媒を試したところ、90%以上のセシウムが溶出される条件を見いだした。今後は、共同研究者が開発した磁性除染剤による放射性セシウムの回収を試みる。 4.ルーメン液による植物細胞壁可溶化処理に寄与する細菌叢の解明. ルーメン液処理において植物細胞壁可溶化に寄与する細菌を推定するべく、経時的な菌叢解析を行った。これと、セルラーゼ、キシラナーゼおよびリグニン分解酵素活性の経時変化とを比較したところ、その推移が一致するものが複数検出された。今回検出されたこれらの細菌は、今後のルーメン液処理を進める上で、重要な指標微生物と成り得る。本年度は、日本生物工学会若手研究会にて、優秀ポスター賞を受賞し評価を受けた。
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