研究課題/領域番号 |
14J08204
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
近藤 克文 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 微粒子 / PM / 電子顕微鏡 / 内燃機関 / ディーゼル燃焼 / 光学計測 / レーザー / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
ディーゼル機関から排出される微粒子低減に必要不可欠な,噴霧火炎内微粒子生成・消滅過程の解明を目標に,平成27年度に実施した研究内容を以下,三項目に分類し述べる. 1.初年度作成した微粒子の微細構造(フリンジ長さ・屈曲率・間隔)を定量解析するアルゴリズムを用いて,微粒子の表面成長現象を調査するために,粒子の成長が支配的となっている本噴霧火炎の上流域(噴孔先端から40 mm ~70 mmを10 mm刻みで4点)について微粒子の捕集実験を行い,TEM観察から得られた画像について解析を行った.その結果,火炎上流部では,特にフリンジ間隔が,高温燃焼場でのアニーリング効果により狭まっていくことがわかった. 2.火炎内微粒子の酸化速度を定量化するために必要な,温度,中間生成物OH及び微粒子の濃度,の時空間分布を得ることを目的とし,平成27年度は,火炎直接写真(温度),OH自発光(OH濃度),レーザー透過光影写真(微粒子濃度)を同時に撮影する光学系を確立した.同光学系において同時撮影を行い,どの画像においても観察に十分な輝度を得ることできることが確認された. 3.現在の微粒子捕集装置で再現できていない,実エンジン筒内の現象で特に微粒子生成過程に影響を与えるとされる噴霧火炎の壁面衝突現象を,現用の燃焼器で模擬し,光学計測及びTEM解析により調査することで,排ガス微粒子の性状予測精度を向上させることを目的とする.平成27年度は噴霧火炎の壁面衝突時に生じる境界層内微粒子挙動を観察するために検討していた,LII・散乱光計測の光学系を確立した.予備実験から,懸念されていたレーザー光の燃焼容器内壁等による散乱の影響は無視できるほど小さいことがわかり,確立された光学系が有用であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディーゼル噴霧火炎内微粒子の生成・消滅過程の解明及びそのモデルの構築に必要とされている,微粒子前駆物質の構成,分子量,生成速度,核形成及び表面成長に関わる火炎内結晶子の大きさ,形状,微粒子のディーゼル噴霧火炎中での酸化速度,実エンジン筒内における噴霧火炎の壁面衝突現象の影響,を定量的に評価するため,当該研究を3テーマ(①火炎内微粒子の微細構造調査,②酸化速度の調査,③実エンジンでの現象解明)に分け,並行して進めている.火炎上流部複数の位置で微粒子捕集実験を行ったが,いずれの位置においても解析に十分な粒子を捕集できており,またその定量解析結果から火炎上流から中流にかけての微細構造の変化を捉えられていることから,同様の解析を火炎下流部にも適用することでエンジン筒内での燃焼中の微粒子微細構造の傾向を把握できる見通しを得ている.また,酸化速度の調査のための同時計測光学系及び実エンジン筒内現象解明のためのLII・散乱光計測光学系を確立し,それぞれの予備実験において観察に十分な輝度値を得られていることが確認された.これらの計測を様々な条件で行うことで,火炎内微粒子の酸化速度や筒内現象を把握できる見通しを得ている. 上記理由より,全体を通して当該研究は概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策を以下にテーマ毎に記載する. 微細構造の調査:微粒子の捕集実験を噴霧火炎下流部で行い,得られた微粒子の微細構造を定量解析することで,平成27年度の火炎上流部の結果と合わせて,火炎全体における傾向を把握し,燃焼中の微粒子の内部構造が生成から消滅に至るまでにどのような経過をたどるのかを明らかにする.特に酸化現象を解明するために,微粒子の酸化が支配的となっているとされる下流部において,微粒子内に積層されている結晶子の長さ及び間隔に注目して解析を行う. 酸化速度の調査:平成27年度に確立した,火炎直接写真,OH自発光,レーザー透過光影写真,の三種同時計測光学系で,同一ディーゼル噴霧火炎に対して撮影することで,火炎温度,OH濃度,微粒子濃度の時空間分布を取得する.ここで,報告者の先行研究で取得した,同一噴霧火炎における位置毎の微粒子性状定量データから,微粒子の平均表面積を概算し,上述の局所の火炎温度,OH濃度,微粒子濃度をNeohらの式に代入することで異なる位置における微粒子の酸化速度を算出する.ここで得られる酸化速度と「微細構造の調査」での微粒子微細構造の酸化傾向を比較し,酸化速度と微細構造変化の対応を観る. 実エンジンでの現象解明:平成27年度に確立した,LII・散乱光計測光学系で,従来捕集装置と壁面衝突模擬捕集装置における境界層内粒子径分布を定性的に比較する.また初年度に実施した,壁面付着微粒子の電子顕微鏡画像解析結果と比較することで,微粒子性状の境界層内と堆積後の相関を定性的に評価する.
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