ディーゼル機関から排出される微粒子低減に必要不可欠な、噴霧火炎内微粒子生成・消滅過程の解明を目標に、平成28年度に実施した研究内容を以下,三項目に分類して述べる. 1.微粒子の消滅過程を調査するために,粒子の酸化が支配的となっている本噴霧火炎下流域及び周辺域において,微粒子の補修実験を行い,TEMにより定性的に微細構造の変化を観察した.その結果,特に周辺部の粒子は,やせ細った,表面が歪な凹凸構造をしており,OHにより急速に酸化が進行している可能性が高いことが明らかとなった. 2.火炎中の微粒子酸化速度を定量的に評価するために,火炎噴霧軸上の微粒子粒径変化を,TEM解析で得た微細構造(層長さ及び間隔)を用いることで,質量換算し,局所(火炎中心部)の酸化速度を算出した.得られた酸化速度は0.0013 g/(cm2・s)程度となり,二色法により得られる酸化速度(0.0015 g/(cm2・s))とも矛盾せず,数値解析結果の検証に妥当なデータを得るに至った. 3.現在の微粒子捕集装置で再現できていない,実エンジン筒内の現象の中で特に微粒子生成過程に影響を与えるとされる噴霧火炎の壁面衝突現象を,現用の燃焼器で模擬し,光学計測及びTEM解析により調査することで,排ガス微粒子の性状予測精度を向上させることを目的とする.本年度は,火炎内粒子性状の非定常的な変化に着目し,新たに時間分間サンプリングが可能な捕集装置を設計・製作し,定容容器内で粒子の時空間分解捕集及び解析を試みた.その結果,火炎下流部の先端通過時期に捕集された粒子が,排気微粒子径に匹敵する程の大きさとなっていることが明らかとなった.実機筒内では,空気過剰率は低く,また膨張行程により温度・圧力共に低下し,これらの火炎先端部で大粒径化した粒子が筒内で酸化され切らずに排気に至る可能性が示唆された.
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