本年度は,1. 局所位相特徴に基づくマルチモーダルバイオメトリクス認証の検討,2. 指関節紋認証システムの開発に関する検討,3. 歯科診療情報を用いた個人識別の検討を行った.本研究では,昨年度までに,局所位相特徴に基づく照合アルゴリズムが,複数の生体特徴に対して有効であるという結果が得られている.本年度は,まず,この照合アルゴリズムを用いて,掌紋,指関節紋,顔,虹彩のそれぞれで照合スコアを求め,それを融合することで認証性能を向上するマルチモーダルバイオメトリクス認証を検討した.公開画像データベースを用いて,さまざまなスコア融合手法について評価・比較を行い,局所位相特徴を用いた照合アルゴリズムにより単一の指標で算出された類似度の融合が,それぞれの生体特徴で代表的な照合アルゴリズムにより算出された類似度の融合と比較して,生体特徴の組み合わせや融合手法に依存せず認証性能を向上することが可能であることを実証した.次に,指関節紋認証について,ドアレバーを用いた指関節紋認証システムを対象として,指の第3関節近傍のパターンを用いた個人認証システムを検討した.実用に近い環境下で評価用データベースを作成して性能評価実験を行い,指の第3関節近傍のパターンを用いた個人認証が,これまで検討してきた指の第2関節近傍のパターンを用いた個人認証と同等以上の認証性能を有し,より容易に認証システムを構築できることを実証した.そして,本研究の成果を応用し,歯の治療に関する情報などの歯科診療情報を特徴とした個人識別について検討した.問題の定式化および大規模データベースを用いた性能評価実験により,歯科診療情報が個人識別に有効な特徴であることを実証した.
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