研究課題
初年度の目標であった提案システムの理論モデル構築は,予定通りほぼ完了することが出来た.01ナップサック問題を適用した最適な接続基地局選択法を考案し,提案するネットワークに適用し,パフォーマンス解析を行った.この特性解析を行うにあたり,システムレベルシミュレータの開発も同時に行った.開発したシステムレベルシミュレータには,実際の東京23区内のモバイルトラヒックデータを元に作成したトラヒックモデルと,共同研究によって作成した屋外におけるミリ波伝搬チャネルモデルを実装している.特性解析結果により,マルチユーザMIMOを用いることで,平均スループットは現在のおよそ1800倍の1183Mbps,5%アウテージスループットは現在のおよそ100倍の18Mbps,そしてシステムレートは現在のおよそ1800倍の218Gbpsとなった.なお,この解析において,平均トラヒック量は現在の1000倍(10年後)を想定している.この結果より,提案するシステムによって目標としている1000倍のスループットが得られることを立証することが出来た.標準化に向けた活動はこの数年間でより活発化してきている.そこで,本研究においても,開発したシステムレベルシミュレータを用いて第5世代に適したミリ波周波数帯の提案を行った.国際的な周波数割り当て状況を鑑みて対象を31.8-33.4GHz,45.5-47.0GHz,47.2-50.2GHz,55.78-76.0GHz,81.0-86.0GHzの5つに絞ってシミュレーションを行ったところ, 20GHz以上の帯域幅を有する55.78-76.0GHzが将来的に最も有用であることがわかった.
2: おおむね順調に進展している
当初の目標通り,マイクロ波とミリ波が混在するヘテロジニアスネットワークにおける通信方式や制御方式の決定,およびミリ波屋外伝搬特性を調査し,チャネルモデルの作成を行うことで,ミリ波を用いたセルラネットワークシステムの物理層に関する理論モデル構築を完了することができた.また,システムレベルシミュレータの作成も行い,シミュレータでの解析により,1000倍のスループットが得られるシステムが構築可能であることを立証する事ができたため.
今後は,提案した制御方式をプロトタイプハードウェアに実装し,実際に1000倍のスループットが得られることを確認する.また,作成したシステムレベルシミュレータを用いて60GHz帯以外のミリ波帯についても特性解析を行うことで,今後ITU-Rで進められる6GHz帯以上の周波数割り当て計画に対し提案を行っていく予定である.これらシミュレーションや実験を通して得られた結果を,共同研究先の協力のもとで標準化に提案もしていきたいと考えている.
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IEICE Transactions on Communications
巻: 3 ページ: pp.388-402