研究実績の概要 |
非コンパクトなLie群が多様体に作用しているとき, 群作用で不変なRiemann計量が存在するとは限らない. これは, コンパクト群の場合に有用だった手法の多くが全く使えないことを意味する. 非コンパクトな群作用を反映したコホモロジーの理論を発展させ, 幾何的な理解を深めることが研究の目的である. (1)多様体のde RhamコホモロジーとLie環の相対コホモロジーを比較することで, コンパクト多様体の局所的なモデルになり得ないような等質空間の例を構成できることが, Kobayashi-Ono(1990)などの研究により分かっている. この手法が適用できる半単純対称空間の分類リストを日本学士院の紀要において発表した. さらに, この手法の本質的な部分にLie群の簡約性・ユニモジュラー性は全く用いられてないことを発見した. 応用として, 可解な線型実代数群の1次元以上の余随伴軌道がコンパクト多様体の局所的なモデルになり得ないことを証明した. (2)作用するLie群がコンパクトでないときには, 同変de RhamコホモロジーとBorel構成による同変コホモロジーは同型とは限らないことが知られている. Lie群Gに離散位相を入れた群G^δについて2つの同変コホモロジー理論を比較することで, 平坦主G-束の特性類写像が得られると分かった. 議論が単純かつ一般的であることから, 平坦主G-束以外の幾何学的対象, あるいはde Rhamコホモロジー以外のホモトピー不変な関手について, よい類似の理論が構築できるかもしれないと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の結果はいずれも, 研究計画作成時には予期していなかった結果である. 特に, 平坦主G-束に関する発見によって, 本研究の目標である「非コンパクトLie群の同変de Rhamコホモロジーの位相幾何学的な意味の理解」は予定以上に深まったと思う. 一方, これらの研究に時間を費やしたため, 当初予定していた表現論との関連の研究については計画していたより進まなかった.
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