研究課題/領域番号 |
14J08274
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
竹尾 駿 東京農業大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 卵子 / 老化 / ウシ |
研究実績の概要 |
申請者は加齢による卵子の質低下の原因を解明し、それを制御することを研究の目的としている。本年度はその中でも、卵子の質低下につながる因子の候補として糖最終産物に着目した。具体的には、糖最終産物の卵胞液中での濃度が加齢によって有意に増加し、加齢卵胞液または糖最終産物を培養液中に加えると、加齢卵子に見られる異常受精の増加や、活性酸素量の増加などの異常が観察された。このように糖最終産物により加齢卵子で見られる異常を再現できたことから加齢による卵子の質低下の一因となっている可能性が示唆された。しかし、卵胞液には他にも多くの成分が含まれていることや、加齢による質の低下は複合的な要因である可能性があり今後も質低下の要因を探る必要があると考えている。 これに加えて、卵子中でのミトコンドリアの品質管理機構に関わる研究を行い、加齢によって不良なミトコンドリアを除去する能力が低下していることがわかった。この研究では、初めに人為的にミトコンドリアへ傷害を与えることで、ミトコンドリアの品質管理機構を働かせる様に若齢および加齢個体に由来する卵子を培養の初めに処理した。その結果、若齢個体では障害を受けた後に、ミトコンドリアの作り変えが起き、培養期間中に卵子の質は回復することで最終的には発生にも影響は見られなかった。一方で、加齢卵子ではミトコンドリアへの障害を受けると若齢個体で見られたミトコンドリアの作り変えが起こらず、卵子の質が低下してしまい、発生においてはその成績が有意に低下する結果となった。このことから、加齢卵子ではミトコンドリアの品質管理能力が低下しており、ミトコンドリアが障害を受け不良なものになった際にそれを排除することが出来ずに、卵子の質を低下させている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は当初の研究計画では、研究2年度目までに卵子の質を低下させる主要因を絞ることを予定していた。これは老化による卵子の質低下は卵子内から引き起こされる要素以外にも、卵子周囲の環境からの外因性の要素も卵子の質低下を引き起こしているという仮説に基づくものである。今年度はその中でも、昨年度に引き続き、卵子周囲の環境で加齢による変化を新たに見つけることができ、新たな加齢による影響について知見を得ることが出来た。これに加えて、糖最終産物の濃度が加齢個体の卵胞液では有意に高く、またそれの添加により加齢卵子で見られる異常が再現できることなどから、質低下の一因となっている物質の候補として糖最終産物を挙げることできた。この卵子周囲での環境の変化による質低下の要因の探索では、当初の方法などから予定を変更している部分もあるが、候補となる因子を挙げることもできたため概ね順調に計画は進んでいると考えられる。また外因性の要素以外を探ることに並行して、卵子内で起きている卵子の質低下の要因についても研究を進めることが可能になり、成果や新たな知見を得ることができた。具体的には、卵子の質は卵子内のミトコンドリアが大きく影響することが広く知られており、加齢卵子ではその数が少ないという報告もされている。この卵子内ミトコンドリアに関係する実験を行い、加齢卵子内ではミトコンドリアが障害を受けた際の作り変えが起きにくいという結果を得ることができた。当初の目的である質低下の原因を探るという点に加えて、計画が順調なため加齢卵子のミトコンドリアに関する研究など当初の予定よりも大きく研究が進展している点もみられることから、本研究は計画通りに順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は概ね順調に進行している他、計画以上に多くの知見を得ることが出来ており、今後の研究の計画としては、大きく3つに分けられる。具体的には、①糖最終産物以外の外因性質低下の要因を探索すること、②卵子内における質低下の要因の探索、③卵子の質を向上させる方法の開発に分けられる。①においては、これまでに多くの卵胞液中の成分等で加齢による影響が見られていることを明らかにしているため、糖最終産物以外にも加齢による卵子の質の低下を招いている因子があることが考えられる。つまり老化は一つの因子による能力の衰えだけでなく、複合的な可能性があると申請者は考えているため、他の成分についても詳細に検討を行うことを予定している。②では計画2年目において、ミトコンドリアの作り変えが弱くなることを明らかにしたように、卵子内で起きている異常を把握することも卵子の質を改善する方法を見つける上で重要である。そのため、①と並行して加齢卵子内で起きている変化についてさらに詳細に検討することを予定している。③は最終的にこれまでの研究から得られたデータをもとに行うことになる。現在の予定では加齢卵子で見られる異常と、濃度などに差の見られた卵胞液成分内から卵子の異常と関連が強い卵胞液成分を候補としてピックアップする。この成分が影響するシグナル経路などの細胞内のアクションに対して、卵子の培養液中への阻害や活性化促すことで卵子の質に影響が見られるか検討する予定である。具体的には①の様な外因性の障害から卵子の質向上を考える上では細胞のエネルギー源となる物質の減少が見られることから、加齢卵子ではエネルギー不足に陥っている可能性が考えられる。また②の様な卵子自身の異常ではミトコンドリアに関連する異常が見つかっているため、ミトコンドリアに影響を与えることで質改善を図っていく予定である。
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