本研究では、実大規模の立体的な可燃物の発熱速度の推定手法を構築するため、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響を把握することを目的とし、以下に示す実験を実施する計画としていた。 実験1) 火炎を通過する間に蒸発する散水量の測定実験 実験2) 立体的な燃焼可燃物への散水実験 上記2つの実験を計画通り実施し、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響に関する定量的な知見を収集した。それぞれの実験の概要を以下に示す。 実験1)については、散水設備から放出された水滴群のうち火炎を通過した量を確認するため、n-ヘプタン火源の上方から散水を行い、n-ヘプタンが鎮火した時点における燃料パンに供給された散水密度(実散水密度)を測定した。また、この実散水密度とn-ヘプタン火源を燃焼させない場合の散水密度の比(本研究では、到達率と呼んでいる)と散水ヘッドの種類や散水高さ、火源の配置条件等の相関性について確認した。その結果、本実験条件の範囲では、火源の位置が中心(スプリンクラーヘッドの直下)から離れるほど到達率が減少する傾向にあることを確認した。 実験2)については、火源として木材クリブを用い、散水が全て木材クリブの直上から表面に当たるよう調整した散水ノズルを用い、可燃物の水平投影面積Ahに対する可燃物の露出表面積Afの割合(表面積率φ)、散水密度w、散水開始時間および散水停止時間を変化させた燃焼実験を実施し、木材クリブの発熱速度を測定した。その結果、散水密度が同じであれば、可燃物の表面積率φが大きいほど、散水による単位面積あたりの発熱速度低減効果は得られにくくなることを確認した。なお、この研究成果の一部を用いてまとめた研究論文が、2015年6月に日本建築学会環境系論文集 第80巻第712号に掲載されることが決定した。
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