研究課題/領域番号 |
14J08288
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 渓 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | QCD和則 / QCD / ヘビークォーク / ハドロン / D中間子 / カイラル対称性 |
研究実績の概要 |
核媒質中のD中間子は、カイラル対称性の破れ・回復、中間子・核子間相互作用の決定、中間子・原子核の束縛状態の有無などの文脈において議論され、興味を持たれている。核媒質中のD中間子は実験的に未だ実現に至っていないが、将来的にはJ-PARCやGSIなどの実験施設にける低エネルギー重イオン衝突実験による研究計画が期待されている。本研究では、QCD和則と呼ばれる理論的手法を用いて核媒質中のD中間子の振る舞いを解析した。解析から得られたD中間子質量シフトは、カイラル対称性の回復などの様々な密度効果と密接に関係しており、有限密度におけるQCD真空の性質やD中間子・核子間相互作用を明らかにする上で極めて重要な結果である。さらに、将来的な実験計画の提案を与えることも期待される。 一方、磁場中のハドロンについては、RHICやLHCにおける相対論的重イオン衝突実験において非常に強い磁場が生成されることが理論的に予想されており、そのような強磁場環境下においてハドロンの性質がどのように変質するかについて多くの議論が交わされている。本研究では、QCD和則を用いて磁場中のD中間子の性質を明らかにすることを目的とする。磁場中の中間子では、スピン固有状態の混合やランダウ準位による質量シフト、QCD真空凝縮の変化などの磁場中で特有の現象が現れることが予想されており、本研究ではQCDからこれらの現象がどのように記述されるかについて定性的・定量的な議論を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、QCD和則を用いて(1)核媒質中のD中間子、(2)磁場中のD中間子についての研究を行った。(1)については、最大エントロピー法を用いて核媒質中のD中間子スペクトル関数を導出した。得られた結果について、現在物理的な解釈を行っている段階である。(2)について、磁場中のD中間子OPEを計算し、QCD和則による解析を行った。これらの研究内容について、国際会議・国内会議において計6件の発表を行った。内容をまとめた論文は現在準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
QCD和則から得られた解析結果について、物理的意味の解釈を行い論文にする予定である。問題点のひとつとして、QCDから得られた結果とハドロン有効理論からの予想の間の不一致について、可能な解釈の提案と解析の改善を試みる。QCD和則を用いた発展的な研究課題として、磁場中でのD*中間子やρ中間子の解析も行う予定である。
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