| 研究課題/領域番号 |
14J08291
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
矢部 優 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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| キーワード | スロー地震 / 深部低周波微動 / 沈み込み帯 / 地震現象の多様性 / 潮汐応答性 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では，沈み込み帯で発生するスロー地震という種類の地震のうち，深部低周波微動と呼ばれる現象を中心に，その発生機構の解明を目指して研究を行っている．深部低周波微動の種々の多様性を明らかにすることで，プレート境界を支配する物理を理解しようとしている．本年度の研究では，「微動の震源パラメーター推定」と「微動の潮汐応答性」という２テーマについて研究を行った．どちらのテーマも，深部低周波微動の特徴の空間多様性を明らかにしようとするものである．
「微動の震源パラメーター推定」の研究では，深部低周波微動の放出する地震波エネルギーの推定を行った．その推定のために，地震波の減衰構造についても推定を行っている．その結果，微動の放出する地震波エネルギーは空間的に不均質であり，スロースリップや超低周波地震のサイズが大きい場所では，放出される地震波エネルギーも大きいことが分かった．
「微動の潮汐応答性」の研究では，潮汐による応力によって深部低周波微動がどの程度励起されるかという特徴について，空間的多様性を推定した．潮汐による応力はモデルにより計算可能であるため，微動の潮汐応答は既知の応力に対するプレート境界の滑り応答を見ていることになり，プレート境界面の摩擦則を定量的に推定することができる可能性がある．
上記で推定したものや，それ以外の種々の微動の特徴の空間多様性を比較することで，深部低周波微動を引き起こす物理を推測できると考えられる．推測された定性的モデルを数値モデルによって定量的に評価することで，深部低周波微動やスロー地震の発生機構の解明が期待される．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究で，DC１研究計画のテーマ（B）「微動の震源パラメーター」の研究について，論文を出版する段階まで到達することができた．さらに，深部低周波微動の潮汐応答性からプレート境界の摩擦法則を推定するというテーマについても，論文の出版を準備する段階まで進めることができた．
微動の潮汐応答性に関する研究は，申請段階では具体的には未想定のテーマであったが，本研究計画の根底にある深部低周波微動の多様性を理解するという目標を達成する上では，非常に重要なテーマである．微動の潮汐応答性の多様性と震源パラメーターなど他の微動の特徴の多様性を合わせて考えることで，微動の発生メカニズムを説明する定性的なモデルを考案することができた．定量的な数値モデルを作成する上で，重要なコンセプトが得られたと考えている．さらに，潮汐応答性のテーマはスロー地震のみならず普通の地震なども対象として大きな発展の期待されるテーマである．
このように，本年度の研究活動では，研究計画の基礎的テーマ（Ａ）と（B）のうち，テーマ（B）についての研究が完了したうえに，発展性の期待できる追加的なテーマについても研究が大きく進んだ．また，研究計画の発展的テーマ①「微動発生モデルの構築」の足がかりとなる定性的モデルについても構築できたため，研究は当初の計画以上に進展していると考えている．
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| 今後の研究の推進方策 |
２７年度は，もう一つの基本的テーマである「微動のグリーン関数推定」についての研究を進めるとともに，微動の潮汐応答性の研究，および発展的テーマ①「微動発生モデルの構築」の研究を進める予定である．
「微動のグリーン関数推定」については，これまでの研究で推定できる可能性は確認しているので，推定されたグリーン関数をLFE波形などと比較して，正しい波形が推定されているか，ノイズの影響はどのように出現するのか，より良い推定法，などについて検討を進め，良い波形が推定できた場合は微動震源域周辺の構造推定や，新しい微動検出法の開発を行う予定である．
微動の潮汐応答性の研究については，潮汐応答性の空間多様性については現在投稿準備中の論文で明らかにすることができたが，微動の活動中に潮汐応答性がどのように時間変化するかという問題についてこれから取り組む予定である．プレート境界面上の摩擦状態や流体の状態が活動の進展とともにどのように時間変化するかということについて，微動の潮汐応答性の時間変化から推定する予定である．
「微動発生モデルの構築」については，現在投稿準備中の論文で提案する定性的モデルで，多くの特徴を統一的に説明できると考えているので，定量的に説明できるかどうか，数値モデルを作成し検討を行う予定である．
以上のように２７年度の研究では，研究テーマ・手法について，申請書の通り多様な切り口で取り組む予定である．
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