研究課題
2015年度は、7月31日から8月9日までウズベキスタンで、8月10日から8月26日まではアゼルバイジャンにて発掘調査、遺跡踏査、および植物標本の採集をおこなった。ウズベキスタンでは、南部のスルハンダリヤにおいて、中石器時代の岩陰遺跡であるカイナル・カマル岩陰遺跡、およびマチャイ洞窟の試掘調査に参加した。カイナル・カマル岩陰遺跡からは、2か所の試掘坑から4点の土壌サンプルを採取し、バケツとフルイをつかったシービングによって炭化物サンプルや微細遺物を回収した。発掘のほか、マチャイ渓谷の遺跡踏査にも参加し、その道中で多数の現生植物標本を採集した。また、マチャイ村の民家で、伝統的なオーブンによるパン焼きや各種料理の調理方法、燃料の利用、野生植物の利用、季節的な活動など民族誌的情報についての観察・聞き取り調査を行った。次にアゼルバイジャンでは、西部トブス県コブラル市において、新石器時代のハッジ・エラムハンル・テペ遺跡の発掘調査に参加した。昨シーズンにすでに地山が露出している箇所が多く、今年度はその地山を完全に出す作業が中心となったため、発掘中に採取した土壌サンプルは6点のみだった。そのほか、発掘済みのセクション壁からボーク・サンプルを採取し、水洗選別作業をおこなった。屋外空間における活動の変遷を明らかにするためである。これでアゼルバイジャン新石器についてのサンプリングはほぼ完了し、今後はその前の中石器時代のサンプリングを目指すことになる。昨年度までに採取したサンプルの分析結果は、論文と学会において発表した。重要なものは、BASOR誌に投稿した発掘調査第2報で発表した、ハッジ・エラムハンル・テペの出土植物の一次的な分析結果と、第4回国際若手考古学者会議で行ったギョイテペ出土植物にかんするポスター発表である。
2: おおむね順調に進展している
アゼルバイジャン新石器遺跡2件については、発掘・サンプリングをほぼ完了しており、サンプルはすべて許可をとって日本に持ち帰り/輸送し、保管している。今年度から発掘がはじまったウズベキスタン中石器遺跡も、まだ試験的ではあるがサンプリングし、サンプルは日本に持ち帰ることができた。アゼルバイジャンの2遺跡については、遺跡間の比較に必要な数のサンプルはソーティングが終わっており、一次的な分析結果は発表されている。プラント・オパールやマイクロモーフォロジーなどと組み合わせた共同研究も成果がでており、残りのサンプルも、日本においてソーティングを進めているところである。
ギョイテペとハッジ・エラムハンル遺跡のサンプルのソーティングを進め、層位的なより詳しい植物利用の変遷が追えるようにする。また、住居内のグリッドサンプルのソーティングをすすめる。住居内のグリッドサンプルは、プラント・オパールとマイクロモーフォロジー用のサンプルも採取しており、石器などの遺物もグリッドごとに取り上げている。遺物の分布や堆積状況から、両遺跡間の空間利用の違いについて考察する予定である。また、新石器時代以前の遺跡でもサンプリングを行い、新石器化のプロセスを解明する。現在ウズベキスタンで発掘中の中石器遺跡についても、サンプリング・ソーティングをすすめるほか、アゼルバイジャンでも新石器より前の遺跡の発掘・サンプリングを試みる。すでに東京大学が、ダムジリ遺跡の発掘許可を取得しており、発掘に参加する予定である。それによって、新石器時代より前の時代における植物利用を明らかにし、西アジアからの農耕拡散の過程やルートを解明することを目的とする。
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西アジア考古学
巻: 17 ページ: 印刷中
考古学が語る古代オリエント:第23回西アジア発掘報告会報告集
巻: 23 ページ: 51-56
巻: 23 ページ: 64-69
Bulletin of the American Schools of Oriental Research
巻: 374 ページ: 1-28
ウロボロス
巻: 20-1 ページ: 12-14