研究実績の概要 |
1) 四万十川採集個体でのRAD-seq解析 昨年度に四万十川で採集し、SNPやマイクロサテライト部位などのゲノム中の多型情報を得るために、RAD-seq解析をおこなった。 2) スジアオノリの配偶子および2本鞭毛型、4本鞭毛型無性胞子のRNA-seq解析 スジアオノリの両接合型の配偶子、および2本鞭毛型無性胞子(無性配偶子)、4本鞭毛型無性胞子(無性胞子)を生殖細胞誘導によって、回収し、これらの細胞で発現している遺伝子の比較をおこなうためにRNA-seq解析をおこなった。真核生物における減数分裂コア遺伝子が保存されていることがわかり、このうち姉妹染色分体の結合に機能しているコヒーシン関連遺伝子(SYN3)が無性胞子や無性配偶子で発現量が低くなっており、前年度に観察された無性個体の生殖細胞形成時の第一減数分裂時に姉妹染色分体が乖離する現象と一致しているように思われた。 3) スジアオノリとヒラアオノリの全ゲノム解析 スジアオノリのゲノム解析を進め、現在までにドラフトゲノムの状態ではあるが、オスのゲノムサイズが約70 Mbpで遺伝子数は8,244個であることがわかっている。近縁種ヒラアオノリとスジアオノリのゲノムを比較したところ、ゲノム全体ではシンテニーが高度に保存されていることが確認できたが、性染色体領域ではシンテニーが失われており、この領域では遺伝子の転座等が起こりやすく、進化速度が速い領域であることが示唆された。またヒラアオノリで単離された性特異的な領域の遺伝子の多くは,スジアオノリにおいても,特定のスカッホールドにクラスター化して存在していることが明らかとなり,この性特異的な染色体領域はアオノリの性決定に保存的に機能していると考えられた。
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