研究課題/領域番号 |
14J08339
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜永 和希 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ランボー / フランス近代詩 / フランス文学 / ロマン主義 / 高踏派 |
研究実績の概要 |
本研究の第1の軸は、19世紀フランスのロマン派から高踏派へ至る詩的伝統とランボー詩のあいだの連続性と断絶の解明であり、第2の軸は、詩形の次元では定型韻文詩から非定型韻文詩を経て散文詩へと至るランボー作品の内部における主題的一貫性と自己相対化の契機の考察である。 平成26年度は、主に第1の軸に即して、ランボーはもちろんのこと、ユゴー、ミュッセ、ラマルティーヌらの大ロマン派、ゴーティエやネルヴァルに代表される小ロマン派、そして高踏派の中心人物であったバンヴィルに関して、一次・二次文献の収集と消化に努めた。 この調査に基づき、まず、初期ランボーの4通の書簡とそこに引用された自作韻文詩を、ミュッセの長詩「ローラ」(1833)およびバンヴィルの詩集『綱渡り芸人のオード』(1857)との比較において分析した。そこから導かれる考察については、ミュッセとバンヴィルに関する先行研究の成果を踏まえて論旨を補強し、来年度中に公表することを予定している。 次に、本研究の中心的対象であるランボーよりも一世代上のネルヴァルについて、韻文と散文の形式的差異を越えた同一テーマの反復と変奏に着目しつつ、キリスト教的モチーフと異教的モチーフの混淆の様態を分析し、「オルタンシアをさがせ ― ネルヴァル的サンクレティスムの一側面 ― 小説「オクタヴィ」との比較における詩篇「ミルト」論」と題する論文を『仏語仏文学研究』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は19世紀フランスの詩人たちに関する主要文献の収集と消化に重点を置いていたが、それを満足に終えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査にいて得られた視座に基づいて、来年度以降は、ランボー作品の総体において、フランス近代詩の伝統的な問題機制がどのような形で受け継がれ、作り変えられているのかを考察する。後期作品である散文詩集『イリュミナシオン』を中心に、主題および表現の細部に着目して、テクスト間の相互参照の様態を解明することが、その主要な方途である。得られた成果については、国内学会等において積極的に公表することを予定している。
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