研究課題/領域番号 |
14J08351
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山迫 淳介 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 黒潮 / 海流分散 / カミキリムシ / 分子系統解析 / 系統地理 / 分類学 |
研究実績の概要 |
1.ウスアヤカミキリ属各種の分類情報、及び分布情報の収集、整理.昨年度に引き続き、国内外の博物館、及び個人コレクションに所蔵されるウスアヤカミキリ属の標本調査を行い、分布情報を蓄積した。また、博物館に収蔵される模式標本の調査も併せて行い、研究遂行に必要な分類情報を収集し、これらの情報を基に昨年度作成したデータベースを追加、修正した。 2.野外調査、及びサンプル収集. 昨年度に引き続き、これまでの標本調査、及び文献データから得られた分布情報に基づき、日本、及び台湾にて野外調査を行い、遺伝子解析用サンプルを採集し、得られた種、及び個体の生態情報を記録した。さらに、国内外の研究者、及び愛好家に協力を依頼し、ウスアヤカミキリ属の各地のサンプルの収集を行った。得られたサンプルは、昨年度作成した本群のデータベースを用いて同定を行った。 3.遺伝子解析、及び系統推定.得られたDNA解析用サンプルのミトコンドリアCOI領域800bp、及び核遺伝子28S領域500bpをPCR法にて増幅、塩基配列を決定した。これらの配列に基づき、系統解析を行い、各集団間の系統関係を調査した。その結果、COI領域を用いた解析では、日本から台湾にかけて分布する本属は、台湾南部から西日本まで広く分布を示す系統と、台湾北部から琉球列島、伊豆諸島、及び対馬を含む西日本の一部に分布を示す系統の大きく2系統に分かれることが明らかとなった。また、分子時計を用いて各集団間の分岐年代を解析した結果、これら2系統、及び各地集団は比較的近年に分岐したことが明らかとなった。一方で、核遺伝子28S領域を用いた解析では、各地の個体群間に遺伝的な違いがほとんどないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね予定していた各地のサンプルを収集したが、収集が若干遅れていたため、それに伴い遺伝子解析が遅れている。現在、引き続きこれらの解析を継続的に進めており、今後の研究成果に期待する。
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今後の研究の推進方策 |
継続して遺伝子解析を行う。得られた結果に基づき、集団遺伝学的な検証を行う。 また、今後の研究基盤となる黒潮の流路や海洋輸送シミュレーションの情報を収集する。また、海流分散を示唆する従来の系統地理学的研究論文を収集する。 沖縄、伊豆諸島や台湾を中心としたサンプル未入手、及び追加サンプルの必要な地域に赴き、不足しているサンプルを収集する。 研究結果から推定された系統地理情報と、黒潮の流路情報や輸送モデルを比較し、分散経路を検証する。 得られた結果を学会で発表し、論文として公表する。
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