研究課題
本研究では,二酸化炭素地中貯留において二酸化炭素を地中に留め置く役割を果たすシール層(帽岩)に対して発生することが想定される急激な破壊現象の機構を解明することを研究の目的としている。今年度は,まず二相流体存在下における岩石の変形挙動を室内実験により観察し,その特徴を見出した。次に,現実的なパラメータ値を用いた数値シミュレーションにより室内実験結果を再現するとともに,シミュレーションの結果に基づき変形挙動の特徴を説明した。ここで実施した検討においては,二相流体存在下における多孔質弾性体の構成関係式中に現れるパラメータの一つであるBishopの有効応力係数の濡れ相飽和度依存性が岩石変形に与える影響を明らかにすることはできなかった。今回実施した実験においては実験実施上の問題から現象が定常状態に至るまでの変形データを取得することができなかったが,数値シミュレーションによる検討からはBishopの有効応力係数の濡れ相飽和度依存性が変形に与える影響は定常状態において最も顕著になることを示唆する結果が得られた。このことを踏まえて,ここでは定常状態に至るまでの実験を実施するために必要となる実験装置を開発し,さらにその装置を用いた新規実験方法を考案した。本研究では,岩石変形に対する理解を拡張することによる岩石破壊の理解を試みる予定である。そのため,二相流体存在下における岩石の変形挙動の特徴を見出すとともにその定量的な説明に成功したことは,岩石変形の理解において有意義であるとともに,岩石破壊の機構解明においても重要であると考えている。
2: おおむね順調に進展している
室内実験により二相流体存在下における岩石の変形挙動の特徴を見出すとともに,その定量的な説明に成功しており,おおむね順調に進展していると判断される。
実験装置の不調や岩石試料作製時の試料損傷等の問題から室内実験の実施状況に若干の遅れが見られるため,今年度はこれまで用いてきたものとは異なる実験装置および岩石試料を用いて室内実験を進める。次年度は,まず室内実験の実施を優先し,その後実験結果の定量的説明を試みることとする。
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Journal of Geophysical Research Solid Earth
巻: 119 ページ: 6211-6228
10.1002/2013JB010937