本研究では、二酸化炭素地中貯留において二酸化炭素を地中に留め置く役割を果たす帽岩に対して発生することが想定される破壊現象の機構を解明することを研究の目的としている。今年度は、帽岩になると想定されている岩種の一つである泥岩について、二酸化炭素が浸入した場合の変形を理解することを目的とした室内実験を実施した。具体的には、水で飽和した上総層群梅ヶ瀬層の泥岩試料に対して、静水圧応力条件下において下端から空気を圧入する実験を実施した。なお、実験では試料の中央の高さにおける軸・周ひずみを計測した。二相流動と弾性変形の連成過程を解く数値シミュレータを用いて実験の数値シミュレーションを実施した結果、数値シミュレーションから得られたひずみは実験で得られた値よりも大きかった。間隙流体圧に関する実験条件と泥岩試料の間隙径分布からは、実験においては空気が選択的な流路を通じて試料中を流動した可能性が考えられた。一方、数値シミュレーションにおいては二相の流体は均質な試料中をDarcy則に基づき流動し、試料中においては選択的な空気の流路が形成されなかった。以上の結果は、泥岩の変形は二相流の流動様式に影響を受ける可能性があることを示唆しており、今後、現象の把握のための新たな検討が必要となることを示しているといえる。本研究で得られた成果は、二相流体存在下における泥岩の力学的挙動の理解を進展させるものであると考えられる。
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