研究課題
本研究は口腔扁平苔癬などの口腔内に高頻度に出現する粘膜疾患の病態を組織中の元素分布分析の観点より解明することを目的に,国内にある大型放射光施設を利用して遂行した。平成27年度は口腔扁平苔癬(OLP)および口腔扁平苔癬様疾患(OLL),正常粘膜(Control)組織に対して元素分布分析と検出元素に対する化学状態分析,定量分析を行った。SR-XRF分析においては,OLP/Control群では外来および生体由来の微量元素の局在は認めなかったのに対し,OLL群では歯科用合金の主要合金成分が検出された。そして,XAFSによる化学状態分析では,OLL組織中での検出元素が水和イオンや硫化物,酸化物状態として存在していることが明らかとなった。濃度換算評価では,OLPやContorol組織に対してOLL群ではNiやCu,Zn,Crが1~2桁高い濃度であった。OLPやOLLは口腔外科領域では高頻度に出現する角化異常を伴う慢性炎症性病変で,前者は原因不明,後者はある程度原因が予測できるものとして区別されている。しかし,OLPとOLLの臨床像や病理組織像は極めて酷似しており,両者を鑑別することは困難である。また一部の病態においては癌化するとの報告もあり,臨床現場では両者の鑑別診断と治療法の確立が強く望まれている。本研究に用いた新たな高感度分析手法の導入により,これまでのOLLという概念から,metal-induced OLLという概念へ改めることが可能となり,これまでのOLLに対する対症療法から脱却し,原因金属を除去するという根治的な治療の実現が期待される。これは,潜在的癌化リスクの軽減にも繋がるものと考えられた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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