研究課題
光触媒は、エネルギー・環境分野への応用が期待されている触媒材料であり、更なる光触媒活性の向上に向けて、原子レベルでのより深い理解が求められている。本研究では、光触媒の詳細な分析をするために、原子レベルで設計したモデル光触媒を作製し、水と光触媒の界面物性について調べている。本年度は、光触媒上の水和構造に着目し、研究を進めた。酸化チタンのような光触媒材料では、光照射によって親水性が向上する光誘起親水化という現象も知られており、マクロな物性である親水性とミクロな水和構造の関連性を明らかとすることは、応用面だけでなく学問上も意義のある課題である。モデル光触媒としては、原子レベルで平坦なチタン酸ストロンチウムおよびその表面に助触媒として白金ナノ粒子を担持した試料を作製した。原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いることで、原子分解能での水和構造を直接観察でき、暗中では水和構造は弱いものの、光照射によって、光触媒表面と水との相互作用が強まり、水和構造が強くなるという現象を初めて観察することに成功した。光触媒上の親水性の評価と分子動力学法による理論計算を合わせて行うことで、光誘起親水化のメカニズムを理解するに至った。加えて、モデル光触媒の作製過程において、偶然ではあるものの、金属助触媒をナノサイズのピラー形状として光触媒内部に埋め込んだ新規なナノ構造を作製できることを見出した。金属ナノピラーの形成により、光触媒内部で生成する光励起キャリアの輸送特性が向上することがわかり、光触媒高効率化に向けた新手法を提案できた。
1: 当初の計画以上に進展している
モデル光触媒の研究を通して、光触媒で見られる光誘起親水性の本質を明らかにできた。加えて、金属助触媒をナノサイズのピラー形状として光触媒内部に埋め込んだ新規なナノ構造を作製できることを見出し、光触媒高効率化への新手法を提案できた。これらの結果は、当初の計画以上の成果である。
当初の計画通り、助触媒が水と光触媒の界面物性に及ぼす機能性を明らかにするため、モデル光触媒を用いた分析を継続する。また、金属ナノピラーを光触媒内部に埋め込んだ新規なナノ構造を見出すことができたので、光触媒高効率化への可能性をさらに検討する。
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J. Phys. Chem. C
巻: 118 ページ: 20222 - 20228
10.1021/jp5062573