緑色光合成細菌の光合成器官を模倣し、人工的な光捕集・伝達に優れた光機能性超分子ナノ構造体を構築し、その機能解明やデバイス開発を行うことを本研究の目的としている。平成27年度は、クロロフィル誘導体を用い、(1)クロロゾーム型ロッド状自己集積体(SA)の光機能評価、(2)サイズ制御、(3)他色素との複合化、(4)光機能性超分子ナノデバイスの評価を行った。以下にその詳細を記す。 1.ロッド状SAの光機能評価:ロッド状SAの励起エネルギー移動過程は、分光測定やモデル計算が行われただけで、それ自体を顕微分光した例はない。ロッド状SAの顕微分光を行うために、ガラス基板を疎水化し、ロッド状SAの固定化と安定化を試みた。真空・低温下で蛍光測定を行うことで、サブマイクロメーターのSAの蛍光像が観察可能であった。 2.サイズ制御:昨年度に見出したSAの成長を阻害しうるクロロフィル分子を用い、顕微鏡によるロッド状SAのナノ構造の観察を行った。均一なサイズのロッド状SAは形成せず、ロッド状SAは強い分子間相互作用により成長することが明らかとなった。 3.他色素との複合化:ロッド状SAと他の色素分子を組み合わせることで、光機能に優れた超分子構造体の構築を目指した。昨年度に見出した亜鉛バクテリオクロロフィル-a誘導体に加え、亜鉛クロロフィル-a誘導体もロッド状SAと複合体を形成することが新たにわかり、様々な色素分子を用いて固体状態でのエネルギー移動系を構築することに成功した。 4.光機能性超分子ナノデバイスの評価:ロッド状SAおよびその複合体のデバイス評価を行った。光電流測定により、ロッド状SAが外部へ光電子移動する媒体として有用であることが明らかとなった。また、亜鉛クロロフィルにエネルギーアクセプターを共有結合で連結した分子をロッド状SAと複合化させ、外部へのエネルギー移動系を新たに構築することに成功した。
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