研究課題/領域番号 |
14J08476
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木庭 乾 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 自然免疫 / Th2型疾患 / 抗寄生虫免疫 / 抗腫瘍免疫 / 自然リンパ球 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者が新たに見出したIL-4応答性NK細胞サブセットplasmacytoid NK (pNK)の分化機序,細胞機能および生理的意義の解明を目的としている。特に本年度は,以下に示す4つの課題について解析を行った。(1) pNKの網羅的遺伝子解析,および結果から予想される細胞機能の検証 (2) IL-4によるNK細胞への直接的な作用の解析 (3) pNK増殖に関わる因子・細胞の同定 (4) pNKの出現が予測されるTh2型疾患モデルマウスの解析 (1)について,次世代シークエンサーを用いたpNKの網羅的遺伝子解析を行い,pNKを他のNK細胞と区別するマーカー分子の候補を得た。また,pNKの新たな機能として,GMCSFやIL-10を高発現することを見出した。(2)について,IL-4存在下で定常状態のNK細胞を培養することで,サイトカインや細胞傷害性タンパク質の産生能、および一部のマーカー分子の発現パターンがpNK様の性質に変化することを明らかにした。(3)について,pNKの増殖因子としてIL-15に着目し,IL-4過剰発現マウスの肝臓におけるIL-15の主要な産生細胞がマクロファージであること,IL-4により活性化したマクロファージがIL-15を介した高いNK細胞支持能を発揮することを明らかにした。(4)について,寄生虫感染マウスを解析し,感染後期の腸間膜リンパ節においてIL-4依存的にpNKに似た細胞が出現することを見出した。(1)-(4)の研究成果により,pNKの生理的意義の解明に向けて大きく前進することができた。 これらの研究成果については,2014年12月に行われた日本免疫学会にて口頭およびポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,初年度の研究計画にあったpNKの網羅的遺伝子解析およびTh2型疾患におけるNK細胞の解析を着実に遂行し,pNKの新たな性状・機能を明らかにするとともに,生理的な疾患モデルである寄生虫感染マウスにおいてpNKが出現することを見出すことができた。加えて,in vitroで定常状態のNK細胞からpNK様の細胞を誘導することに成功すると共に,in vivoでのpNKの増殖にIL-4応答性のマクロファージが寄与している可能性を示すことができた。こうした成果は,最終目標であるpNKの生理的役割の解明に直接貢献できるものであり,次年度により一層研究を押し進める原動力となることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,pNKの出現が確認された寄生虫感染モデルマウスの解析を中心に行い,pNKの生理的役割の解明を目指す。これまでに見出したpNKに特徴的な機能である高いGMCSF産生能,IL12応答性,細胞傷害活性などについて,寄生虫感染モデルにおいても確認できるのか,そしてそれがどのような意義を持つのかについて解析を行う。方法として,IL-4受容体ノックアウトマウスと野生型マウスとで感染時のNK細胞の機能を比較することで,IL-4依存的な応答を抽出する。さらに,NK細胞を除去する手法を感染マウスに実施し,寄生虫感染および宿主応答にNK細胞が与える影響についても解析する。また,IL-4応答性のマクロファージがNK細胞の支持に重要であると考えられたことから,マクロファージの除去も合わせて実施し,寄生虫感染時に起こるIL-4を中心とした免疫応答について,より広く深い理解を目指していく。
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