研究課題/領域番号 |
14J08574
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 裕己 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | デザイン支援 / コンピュータグラフィクス / ヒューマンコンピュータインタラクション / ユーザインタフェース |
研究実績の概要 |
クラウドソーシング技術とデータ解析技術を組み合わせたコンテンツ生成支援の研究を行った。この研究では、クラウドソーシング技術に基づくヒューマンコンピュテーションを通して人間の審美的好みに関するデータを大量に生成し、それを解析することで、コンテンツ生成に必要な評価関数の構築をする手法や、それに基づきコンテンツ生成を支援する枠組みを提案した。また、これをコンピュータグラフィクスにおけるカメラ制御やシェーダ制御に適用した。この研究に関して、昨年発表した国際会議論文の内容を発展させ、論文誌「コンピュータソフトウェア」への投稿を行い、採択された。 個人のコンテンツ生成履歴を元に更なるコンテンツ生成を支援するシステムに関する研究を行った。この研究では、コンテンツ生成に必要な評価関数の構築を個人のコンテンツ生成履歴から行う手法を提案し、これに基づく新しいデザイン支援の枠組みを提案した。この成果に関してHuman-Computer Interaction分野の国際会議CHI 2016へ論文投稿を行い、採択された。 三次元プリント可能で機能的な三次元モデルをユーザの要求に応じて自動生成する研究を行った。この研究では、複数手法を組み合わせてデザインの候補を大量に生成し、それらに対してユーザが評価・選択することで最終出力を得るような枠組みを提案した。この成果について論文誌ACM Transactions on Graphicsへの投稿を行い、採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は新しいコンテンツ生成の枠組みを模索していくことであり、そのためにはシステムがコンテンツを自動生成する機構、及びユーザの審美的要求に基づいて自動生成されたコンテンツを評価・選択するための機構の、2つの側面からアプローチしていくことが必要である。 クラウドソーシング技術とデータ解析技術を組み合わせたコンテンツ生成支援の研究では、不特定多数の人間の審美的好みを計算モデル化することで、これに基づいてコンテンツを自動生成する機構と、さらにこれを活用しながらユーザが自身の審美的要求に基づいて対話的に評価・選択などを行い最終的なコンテンツを生成していく機構を実現した。個人のコンテンツ生成履歴を元に更なるコンテンツ生成を支援するシステムに関する研究では、特にユーザが審美的要求に基づいてコンテンツの評価・選択などを行っていく側面について、新しい方法論を提案し、実現した。三次元プリント可能で機能的な三次元モデルをユーザの要求に応じて自動生成する研究では、様々な処理モジュールを組み合わせることで大量の三次元モデルを自動生成する機構とともに、その中からユーザが望ましいコンテンツを効率的に選択するための方法論を提案した。 なお当初はコンピュータグラフィクスにおいて思い通りのシェーディング効果を得るためのシステムの開発のために、ペイントユーザインタフェースなどを応用する計画を立てていたが、これについてはクラウドソーシング技術によって不特定多数の人間の審美的好みを計算モデル化するという方法によってアプローチした。 以上の通り、研究内容であるコンテンツ生成支援の研究について、一定の成果が出ており、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに様々なコンテンツ生成のシナリオを想定したコンテンツ生成の枠組みに関する研究を行ってきたが、これらのうち、特に人間の審美的好みを考慮したコンテンツ生成に関する部分はこれまでに前例が少なく、独創性が高いと考えている。今後の方針の一つとして、この部分をより深く追求していき、様々な手法と組み合わせ統合していくことで、コンテンツ生成のための新しい枠組みの提案を行っていくことを考えている。 CGコンテンツの生成・編集には、写真の色調・三次元キャラクタの表情・シェーダ・カメラ制御など、様々なデザイン領域があるが、本研究内容がどのような性質のデザイン領域に対して有効であるか、またどのようなコンテンツ生成のシナリオにおいて有効であるか、検討を行っていく。 研究成果のアウトリーチ活動の一環として、ターゲットユーザに向けて構築したシステムを公開していく。また、エンジニアや研究者に向けてシステムをオープンソース化していく。研究成果は論文としてまとめ学会や論文誌で発表するだけでなく、研究デモ動画などを作成し公開していく。 また、これまで行ってきた個別の技術・評価・考察を統合し、より一般性のある知見として議論しまとめていくことを考えている。
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