研究実績の概要 |
本研究の目的は、回族によるイスラーム復興運動が、他民族・非ムスリムと共同し、より広い「公益」を志向する社会運動として展開してきたプロセスを描き出すことで、宗教や民族を越えた公共性のあり方を論じ、新たな理論的モデルとして提示することである。 以上の目的を達成するため、平成26年度、報告者は、中国雲南省の昆明市を主な調査地として、回族を主とした当該地域のムスリムに対する聞き取り調査、さらに彼らにより行われるダアワ運動などのイスラーム復興運動への参与観察を中心としたフィールドワークを実施した。そこで得られたデータに基づき、イスラーム復興運動に関わる回族、他民族・非ムスリムそれぞれの視点から、イスラーム復興運動の実態の変化、特にその運動で志向される「公益」の変化を明らかにすることを試みた。また、並行して、宗教と公共性に関する理論的研究を実施した。 これらの研究成果の一部は、共著"Revisiting Colonial and Post-Colonial: Anthropological Studies of the Cultural Interface"(H.W.Wong and K.Maegawa (eds.), Los Angeles: Bridge21, 2014, 担当箇所:Chapter 4: The Dilemma of Ordinary Muslims in Religious Revival: A Case Study of Hui Society in Kunming, Yunnan Province, China)、査読論文「游走在“回族”与“穆斯林”之間的宗教性:以云南省昆明市回族社会為例」『宗教人類学』5号(2015年)として出版した。また、南京大学における「"宗教与文化"国際学術交流研討会」、The International Union of Anthropological and Ethnological Sciences (IUAES) Inter-Congressなどの国際会議、および国内の学会、研究会で発表を行った。
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