ここ20年の不安定原子核の研究により安定な原子核に比べて陽子・中性子比が大きく異なる原子核における殻構造が変化し,安定核近傍では魔法性を持っていた原子核が不安定性を増すにつれ変形し魔法性を失ったり,新たな閉殻構造が生じたりすることが実験的に確認されるようになった。中性子過剰な“二重魔法数”を持つ原子核である78Niが魔法性を持ち続け球形構造を維持しているかは長年の謎であった。この謎の解明のため当該研究員は2014年5月に理化学研究所RIBFにおいて一陽子ならびに二陽子ノックアウト反応による78Niの励起準位探索実験を行った。当該年度は原子核反応理論との比較に基づいた一陽子ノックアウト反応により励起される準位の理解をすすめた。同時に二核子ノックアウト反応においてのみ励起される準位の理解を行うべく,新たに殻計算の理論物理学者との議論を行った。同時に,投稿論文の執筆をすすめた。 また,同時に密度の高いシンチレーターを用いた高検出効率のγ線エネルギー計測アレイの開発を行った。理研RIBFに代表されるインビーム核分光実験は,安定な原子核から遠く離れた(アイソスピンが大きな)不安定原子核の性質を知るうえで最も強力な手法である。現在,理研では脱励起γ線をNaI(Tl)シンチレーターアレイDALI2を用いて測定を行っている。事象数の限られるより中性子過剰な原子核や,よりγ線多重度の高い高励起準位測定に利用する為,新たな高検出効率の検出器の検討を行った。近年新たに開発されたGAGGシンチレーターはNaI(Tl)と同程度またはそれ以上のエネルギーならびに時間分解能を持つうえ,潮解性がなく,γ線の検出効率が極めて高いため,本シンチレーターを用いた検出器のシミュレーションや,プロトタイプを用いたテストに着手した。
|