昨年度は、脆性破壊・延性破壊・疲労破壊・水素脆化を網羅的に表現可能な非線形破壊力学モデルを提案し、非線形破壊力学モデルによって表される微視的なき裂進展と巨視的な破壊力学パラメータを関連付けるマルチスケール解析手法を提示した。本年度は、き裂の任意箇所における発生と任意方向への進展を表現するために、破壊の初期段階から最終的な段階までをシームレスに可能な数値解析手法を提案した。具体的には、き裂進展に伴って新たな自由表面が形成される段階を、巨視的な材料剛性が低下する初期段階・新たな自由表面の形成に伴って応力が解放される中間的な段階・完全に自由表面が形成される最終的な段階と捉えたうえで、3つの段階を力学的に矛盾なく接続可能なシームレスき裂解析手法を構築した。 まず、従来の損傷構成則から結合力モデルに矛盾なく移行できるき裂進展解析手法の構築を念頭に、物質点の材料挙動に運動学的な整合性を保ちながら結合力モデルを材料構成則に導入可能な結合力埋込型損傷構成則とその数値解析アルゴリズムを提案した。そして、提案した結合力埋込型損傷構成則と一般化有限要素法の一種である有限被覆法を用いて、材料剛性の低下から完全に自由表面が形成される段階を連続的に移行できるシームレスき裂進展解析手法を開発した。提案した損傷構成則と、新たに開発した有限被覆法を併用することで、材料剛性の低下からき裂面が完全に形成されるまでをシームレスにつなぐき裂進展解析が可能とした。 以上の内容を、Quarterly Journal of The Japan Welding Societyおよび計算工学会論文集に投稿するとともに、国際学会3件と国内学会3件の発表を行った。
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