研究課題/領域番号 |
14J08808
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
兒山 裕貴 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌くん蒸剤 / リサージェンス / Pythium aristosporum / Pythium myriotylum / Meloidogyne incognita / 土壌微生物群集構造 |
研究実績の概要 |
安定した食料生産のために病害虫の発生を抑える土壌微生物の機能(de Boer et al., 2003)が注目されてきた一方で、多くの生産者は病害虫以外の土壌微生物も区別なく死滅させる農薬・土壌くん蒸剤を使い続けている。くん蒸剤の使用を最小限にする取り組みが浸透しない理由は、どんな土壌条件ならばくん蒸剤を使わない方がメリットが大きいのかを判断する基準が存在しないからである。本研究では、くん蒸剤によって土壌微生物の多様性が失われた圃場で起こり得る、病害虫の爆発的増加(リサージェンス)に着目し、どのような土壌条件、防除方法であればリサージェンスを抑制できるのか診断するシステムの構築を目指す。 採用一年目は、群馬県こんにゃく圃場において、二種の土壌くん蒸剤が持つ病害虫の殺菌効果と、土壌が本来持っている病害抑止性や静菌作用への影響を調べた。すなわち、土壌くん蒸剤は慣行的に使用されている土壌くん蒸剤クロルピクリン(クロピク)とその代替薬剤として検討されているカーバムナトリウム塩(キルパー)がこんにゃく根腐病菌(Pythium aristosporum, Pythium myriotylum)、およびネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)とその他土壌微生物に与える影響を評価した。また拮抗菌の探索を行った。 具体的には、①室内くん蒸土壌を用いた発病試験、②二種の土壌くん蒸剤が土壌微生物に与える影響の比較、③拮抗菌の単離を行った。その結果、①発病試験法を確立して発病指数は無処理区<キルパー処理区<クロピク処理区の順に大きくなる傾向にあることを明らかにし、②微生物密度の推移から消毒効果が五ヶ月間は維持されたことと、病原菌を低密度接種した場合はキルパー処理区の方が発病リスクは低くなったことを明らかにした。また③希釈平板法により、他の糸状菌の生育を抑制する菌を分離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用一年目は本研究の最大の目的である、発病試験の試験方法を確立することに時間を費やしたが、様々な手法を検討する事でこの目的を達成することが出来た。発病試験は条件の設定が非常に困難であるため、採用一年目で手法を確立できたことはおおむね順調に研究が進展していると思われる。 また試験圃場での複数回の土壌サンプリングを行ったことで、年間を通した微生物の密度変化を追うことが出来た。これは次年度以降も使用できる重要なデータであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
採用二年目は試験圃場の数を増やして土壌を採取する。消毒前、消毒一ヶ月後、三ヶ月後、五ヶ月後の土壌の微生物群集構造の解析および発病試験を行って二種の土壌くん蒸剤が土壌環境に与える影響を比較する。 室内で土壌くん蒸を行い、Pythium菌およびネコブセンチュウの発病試験を行う事で、圃場で見られた現象の原因を調査検討する。また拮抗菌の探索も継続する。 採用三年目はこれまでの二年間のデータから得られたリサージェンス発生要因の検討を進めるため、上記の試験をより調査項目を絞って綿密に行う。 また有用な拮抗菌を接種試験を行うことで絞り、同定、拮抗作用の解明を行う。
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