研究課題/領域番号 |
14J08808
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
兒山 裕貴 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌くん蒸剤 / 土壌消毒 / クロルピクリン / カーバムナトリウム塩剤 / Pythium aphanidermatum / リサージェンス |
研究実績の概要 |
1)2種のくん蒸剤が土壌微生物に与える影響の評価(圃場試験&室内試験) 群馬県こんにゃく圃場5圃場からくん蒸前およびくん蒸後の土壌を採取してATP含量(微生物バイオマス)を測定した。結果、3圃場でカーバムナトリウム塩剤(MS)区の方がクロルピクリン(CP)区より有意にATP含量が高かった(P<0.05)。この結果は圃場条件というくん蒸剤の殺菌効果が室内くん蒸より効きにくく、また微生物の再侵入がおこりやすい条件下でも、一ヶ月たってもCP区の方がMS区より微生物バイオマスが回復していないことを示した。具体的にどの微生物がくん蒸処理によって殺菌されているのか調べるために、室内くん蒸試験を行った。各微生物の密度とATP含量の相関係数を取ったところ細菌とATP含量(P<0.001)の間に関係性が見られた。よって、2種のくん蒸剤のATP含量の差は一般細菌に与える影響が異なることに起因すると考えられた。
2)2種のくん蒸剤が土壌の発病抑止能に与える影響の評価(室内試験) 室内くん蒸を行った土壌と土壌病原菌Pythium aphanidermatumを用いたキュウリ苗立枯病の発病試験を行った。P. aphanidermarumを9粒接種した場合にMS25%区の方がCP25%区より有意に累積発病指数が低下した(P<0.05)。また1、3粒接種区でも有意差はみられなかったがMS25%区の方がCP25%区より累積発病指数が低い傾向にあった。この発病指数の差が生じた要因を調べるため、MS25%区の土壌を用いて希釈平板法を行い、糸状菌および細菌を単離した。そのうち、糸状菌5菌株と細菌29菌株がP. aphanidermarumに対して拮抗能を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採用二年目の当初、接種試験は現地圃場でくん蒸処理を行った土壌を用いて行った。しかし、現地でのくん蒸処理は条件が一定にならなかったため、2種のくん蒸剤間の発病指数の差が非常に生じにくく、またわずかな接種試験の条件の違いによって反復試験の結果が異なった。この結果から研究の方向転換(室内くん蒸を行った土壌を用いて接種試験を行うこと)を行うまでに時間がかかってしまった。 また、室内くん蒸の条件検討についても数か月を要したため、発病試験を十分に行うことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
採用三年目は現地圃場からくん蒸処理前に土壌を多く採取し、これを用いて室内くん蒸および接種試験を行う。また、採用二年目で、MS処理区から拮抗菌が単離された現象が、単一の圃場特有のものなのかどうか検討するため、複数の圃場から土壌を採取して実験を行うこととする。 室内くん蒸および接種試験の手法は採用二年目に確立したため、以降の実験はスムーズに行うことが出来ると考えられる。 また、発病指数の差がわずかでも、P. aphanidermarumの密度には差がある場合が考えられるため、DNAを用いた分析を行う予定である。
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