研究課題
今年度は昨年度と同様に常磁性金属の強磁性化と磁性の電界効果の起源解明を目的とし、(1) 強磁性近接効果により強磁性化したPt超薄膜及び、(2)強磁性金属Co超薄膜に対して電界を印加した状態で分光測定を行った。実験はSPring-8のBL39XUとBL25XUを利用し、X線磁気円二色性(XMCD)とX線吸収分光法(XAS)を測定した。まず、垂直磁気異方性を有するPd/Co/Pt/MgO試料において、Ptの誘導磁気モーメントの電界印加による変化を調査した。ゲート電圧を印加することでXMCD,XASスペクトルが変化し、総和則を用いた解析により正のゲート電圧(Ptの電子密度の増加に相当)をPt層に印加した際にPtの誘導磁気モーメントが減少していることが分かった。さらに、第一原理計算と照らし合わせることにより、この変化がフェルミ準位の変位と軌道混成の変化の両方から生じていることが明らかとなった。次に、MgO/Co/Pt試料を用いて、Co層の有効スピン・軌道磁気モーメントに生じる変化を調査した。電界の印加により本試料のキュリー温度や磁気異方性が変調されることを電気輸送測定において確認した。一方分光測定においては、XMCD、XASスペクトルにゲート電圧の印加による変化が見られた。両者のスペクトルの積分値に総和則を適用して磁気モーメントの変化を見積もった。その結果、正のゲート電圧の印加によって、軌道磁気モーメントの面直成分は増加する一方で面内成分は減少し、有効スピン磁気モーメントの面直・面内成分はともに減少していることが分かった。今後は、第一原理計算と組み合わせて、電界によって各軌道に生じる変化およびそれらとキュリー温度や磁気異方性の変調との関係性に関して詳細な議論を行い、論文としてまとめていく予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Applied Physics Express
巻: 10 ページ: 013004-1~3
https://doi.org/10.7567/APEX.10.013004
巻: 9 ページ: 063004-1~3
https://doi.org/10.7567/APEX.9.063004
Applied Physics Letter
巻: 109 ページ: 022401-1~4
http://dx.doi.org/10.1063/1.4955265
Physical Review B
巻: 93 ページ: 195168-1~7
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.93.195168