研究実績の概要 |
この研究の1年目の主な目標は, ひとつ目の問題すなわち弱凸な連結コンパクト接触トーリック多様体の分類および同じdiffeo-typeを持つような系列の発見であった. これについては五次元の場合に三次元球面と二次元トーラスを直積したもの, および四次元球面と一次元球面を直積したものにそれぞれ微分同相であるような弱凸接触トーリック多様体の系列を発見したことで一定の結果を得たと考えている. これは2年目3年目における研究の礎となる結果であって, 非常に重要である. たとえば, 得られた弱凸接触トーリック多様体の系列を使ってトーリックシンプレクティック幾何学や強凸な接触トーリック幾何学で行われているようなequivalence problemすなわちトーリック多様体としては異なるがシンプレクティック多様体・接触多様体としては同型になるかどうかという問題を考えることが出来るようになる. つぎに, 弱凸接触トーリック多様体はトーリックK-構造をもたないが, ではトーリックでないK-接触構造あるいは佐々木構造をもつか? という問題について研究をおこなった. その結果, 上にも現れた三次元球面と二次元トーラスを直積した多様体上には, 主にBoyerとTonnesen-Friedmanによって佐々木構造がすでに構成されていることが判明した. (ただし上のものと接触同型かは不明である.)したがって, K-接触構造あるいは佐々木構造の存在問題は位相幾何学的な特徴づけだけでは解決できない問題であるということになり, 弱凸な接触トーリック幾何学がトーリックトポロジー・接触トポロジー的に豊かであることの証左であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
二年目の研究目的であるequivalence plobremに取り掛かる. これはシンプレクティックトーリック幾何学や強凸な接触トーリック多様体における研究手法を参考にしながら行う. これに用いる不変量としては, 当初, 強凸な接触トーリック多様体における研究を参考にしようと考え接触ホモロジーを想定していたが, これにこだわらず様々な不変量で考察を試みる. また, トーリックでない佐々木構造の存在問題にも引き続き取り組んでいきたい. これはBoyer Tonnesen-Friedmanの構成した佐々木構造との比較から始める.
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