研究課題
昨年度に引き続き、腸炎におけるα1-6フコース転移酵素(Fut8)の役割を免疫系のシグナルを中心に解析を行った。WTマウス、Fut8 欠損(KO)マウスにTNBS腸炎を誘導し、腸炎の度合いを比較検討すると、Fut8 KOマウスではWTマウスに比べ腸炎が抑制されていた。さらに、WT、Fut8 KOマウスよりCD4陽性T細胞を分離し、抗CD3/28抗体刺激を行ったところ、WTマウス由来のT細胞に比べ、Fut8 KOマウス由来のT細胞は細胞増殖やp38・JNKのリン酸化、NF-κBの核内移行が有意に抑制され、Th1型・Th2型サイトカインの産生が共に有意に低下していた。このFut8 KOマウスのT細胞において活性化が低下するメカニズムを明らかにするために、T細胞の活性化に重要とされているraftと呼ばれる細胞表面上に存在するコンパートメントに着目して検討を行った。その結果、WTマウス由来のT細胞は活性化されるとTCR(T cell receptor)関連分子がraftへと移行するが、Fut8 KOマウス由来のT細胞はT細胞活性時のraftへのTCR関連分子の移行が低下していた。本研究によりFut8 KOマウス由来のT細胞は活性化が低下しており、その結果T細胞を介した腸炎が抑制されることが示された。さらに、Fut8 KOマウス由来のT細胞において活性化が低下するメカニズムとして、TCR関連分子のraftへの移行が低下していることが明らかとなった。患者検体を用いた検討において、CD患者の腸管炎症局所においてT細胞のコアフコースが増加しており、IBD患者においてもコアフコースが腸炎発症の原因の1つである可能性が考えられる。今後さらなる検討を行う必要性はあるが、未だ原因不明で根本的な治療法が確立されていないIBDに対して、糖鎖を利用した治療法の確立や原因究明に寄与する知見であると考える。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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