研究実績の概要 |
申請者の研究グループではこれまでに、キラルなアミジン基およびアキラルなカルボキシル基を側鎖に有する分子鎖が、塩橋を介して一方向巻きに片寄った相補的な二重らせん構造を形成することを見出している。さらに、人工複製システムの構築を目指し、アミジンあるいはカルボン酸二量体をテンプレートとして用いた、相補的二重らせんのテンプレート合成に関する検討も行っている。しかし、テンプレート上で行った反応はイミン結合形成反応に限られていた。 本研究では、種々のリンカー部位を有するキラルなアミジン二量体をテンプレートに用いて、片末端にプロキラルな2位置換アントラセン部位を有するカルボン酸モノマー (1) の光二量化反応を行い、位置および不斉選択的な光二量化が起こるかどうかを検討した。 1の重クロロホルム溶液に400 nm以上の光を照射し、反応を1H NMR測定により追跡した。また、得られたキラルな光二量体 (syn-HT, anti-HH) をそれぞれ単離し、キラルHPLC測定により、鏡像体過剰率 (ee) を見積もった。その結果、フェニレンリンカーを有するアミジン二量体をテンプレートに用いた場合、syn-HT二量体が相対収率73%、48% eeで得られた。興味深いことに、1の光二量化における位置および不斉選択性は、テンプレートの構造と反応温度に著しく依存し、キラルなアミドリンカー部位を有するアミジン二量体テンプレート存在下、-50 °Cで光照射を行ったところ、相対収率60%、88% eeという高い位置及び不斉選択性でanti-HH二量体を得ることに成功した。
|