研究課題
自動車の運転技量は安全走行,燃料消費,乗り心地などに大きく影響を及ぼす.交通安全と省エネルギーなど問題を解決するための高度運転支援システムや自動運転といった次世代の自動車では,ドライバの運転技量の評価が重要である.運転行為の三要素の「認知・判断・操作」は全て脳活動に関わる.そのため,運転技量の評価はドライバの操作特徴だけでなく,運転中のドライバの脳活動の検討が必要である.本研究に先行して行われる研究によって,モーション装置と音響装置により実車に近い臨場感を実現することが可能なドライビングシミュレータ(DS)を利用するとともに機能的近赤外光分光法(fNIRS)を導入して,臨場感の高い環境下におけるアクセル,ブレーキとハンドルを含む複雑な運転操作と運転走行中の脳の活性とを同期して計測できる実験環境を構築した.そこで,今年度では構築した新しい実験環境を用いて,情報統合に関わる頭頂連合野の活性化状態と運転技量の関係を解明することを目指して研究を展開した.具体的には,運転中のドライバの頭頂連合野の活性化レベルと運転技量のレベルの関係を検討するために,被験者実験を行った.具体的には,実在するテストコースをDSで可能な限り再現して,20~30代の健常ドライバ8名を対象として実験を行った.取得した実験データに基づいて,合成ジャークを用いて運転熟練者と未熟練者を定義した.実験結果によって,運転熟練者は運転中頭頂連合野がより活性化し,情報統合の機能が高くて,運転がスムーズになる.本研究では,情報統合の能力が運転技量の評価において重要であることを明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
本研究は、自動車ドライバーの運転特徴量の抽出に関するものであり、実験環境を構築し具体的な実験を実施している。実存するテストコースを摸擬した走行環境をドライビングシミュレータ上に再現して、被験者実験により新たな知見を得ている。すなわち、カーブの入口におけるドライバの挙動に注目して、脳の活動状況の時間変化を詳細に調べ、運転技量の高いドライバと未熟なドライバでは、脳の活動において差異があることを見出している。情報統合が運転技量の評価において重要であることを明らかにしており、結果の一部は学会にておいても発表している。
今後の計画について,まずは,先行して行われる実車実験とDS実験結果を対比して,DS実験の妥当性を検証する。次に,運転に対して,脳の多いエリアが同時に参加していると思う.昨年度が情報の統合だけ着目して議論を展開したが,運転と脳活動の関係を解明するために,脳機能の相関エリアのネットワーク的な解析が必要である.それから,今回の実験は単純な直線とカーブ走行を対象として検討を行ったが,交通現象に対して他車両や信号や標識や歩行者など様々な交通要素に対して,提案方法によって,運転の「認知・判断・操作」と脳の活動の関係が検討することによって,更なる新たな知見と発見が期待される.最後に,熟練と未熟練者の運転特徴差を解析するために,ドライバモデルと抽出された特徴差の整合性を検討する.
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生産研究
巻: 67 ページ: 153-159
巻: 67 ページ: 161-166