研究課題/領域番号 |
14J08972
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松永 拓也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 流体混合 / 数値拡散 / 粒子法 / ハイブリッド法 |
研究実績の概要 |
本課題は、混相流のマイクロデバイスとしての応用面に着目し、マイクロシステムにおける混相流を伴う流体混合の高精度数値予測手法の開発を研究目的とするものである。研究実施初年度となる本年度は、既往研究の文献調査、従来手法の精度検証、ハイブリッド型手法の開発を実施した。 流体混合や混相流を伴う流れの数値解析に関する既往研究の文献調査を行った結果、以下のことがわかった。格子法をベースとした計算手法は、対流項の離散化誤差に起因して発生する数値拡散が解析精度を著しく低下させる要因となる。一方、粒子法では対流項が現れないため数値拡散の発生を回避することができる。更に、粒子法は移動境界の取り扱いに適する性質をもち、複雑な自由表面変形や相変化を伴う問題に多くの適用例がある。 既存の計算手法である有限体積法とMPS法の計算コードを作成し、数値実験による解析精度の検証を行った結果、以下のことが明らかとなった。格子法である有限体積法は物理量の保存性や計算の安定性に優れており流れの計算では解析精度が高いが、数値拡散の発生により一般の流体混合問題に対して高精度な解を得ることが困難である。一方、粒子法であるMPS法では、流れの計算では精度・安定性が有限体積法に劣るものの、流体混合の計算では大きな数値拡散が発生せず妥当な解を得ることができた。 流れの解法には有限体積法を使用し、濃度の解析には粒子法を使用するハイブリッド型の計算手法の開発を行った。粒子法では計算点配置の不均一性による解析精度の低下と数値不安定性の発生が懸念されるが、最小二乗法を用いた空間離散化スキームを採用することで精度を改善し、粒子分布の均一化補正により不安定性の問題を回避した。数値実験による解析精度の検証を行った結果、本提案手法は数値拡散が極めて小さく、流体混合問題を高精度に評価できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施初年度となる本年度は、マイクロシステムにおける混相流を伴う流体混合の高精度数値予測手法の開発を行うため、既往研究の文献調査、従来手法の精度検証を行う予定であった。実際は、これらに加え、新しい計算アルゴリズムであるハイブリッド型手法を開発し、精度検証についても実施し、ジャーナル論文としてまとめるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
粒子法は、自由表面流れや混相流などの移動境界問題に適する解析手法として脚光を浴びている。しかしながら、複雑形状あるいは薄肉の固体物体の取り扱いに課題があることが知られている。マイクロデバイスでは流路の内壁が複雑な形状をしている場合や、薄肉な回転翼などを有する場合も多く見られるため、粒子法を用いてそのような解析を行うために壁境界の表現手法の改良が求められている。そのような状況を鑑みて、任意形状に適用可能な壁境界表現手法の開発を行いたい。
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