研究課題/領域番号 |
14J09031
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 将史 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 国際制度論 / 多国間経済制度 / 覇権安定論 / アメリカ / 多国間主義 / 二国間主義 / 国際通貨基金 / 国際政治経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、なぜ1980年代以降IMF(国際通貨基金)が国際収支支援において中心的役割を果たすようになったのかを明らかにすることを通して、多国間経済制度が現行の国際経済秩序においてどのような機能を果たしてきたのかを示すことである。 戦後初期から1970年代まで、実質的な国際の最後の貸し手としての役割を果たしてきたのは、覇権国アメリカや主要先進国間の協調体制であった。しかし1980年代以降、IMFは飛躍的にその支援能力を拡充され、国際収支支援の中心としての役割を果たしている。先行研究ではそれを、覇権国アメリカの国際収支支援能力の低下などによって説明してきた。それに対し本研究の仮説は、国際収支支援に対するアメリカ国内からの不満の高まりが、IMFに国際収支支援を委ねる原因であったというものである。そして、多国間経済制度であるIMFが、国際経済の安定に必要な関与を巡るアメリカ国内の政治的対立を緩和し、対外経済協力の継続を可能にするという国内政治上の機能のために、アメリカ政府によって用いられてきたことを示す。 本研究では、仮説構築のための(heuristic)研究として、国内政治上の目的のためにIMFが用いられたEBCI(European Bank Cooperation Vienna Initiative)の過程追跡を行なった。この事例研究を通して、IMFが欧州諸国によってどのように国内政治上の目的で用いられたかを明らかにし、それを基に、アメリカも国内政治上の目的でどのようにIMFを利用し得るかについて仮説の構築を行なった。そして、その仮説を中南米累積債務危機とアジア通貨危機へのアメリカの対応に適用し、実証研究を進めている。 事例研究が完了すれば、国内政治対立の抑制という機能によって、IMFが現行の自由主義国際経済秩序の安定に寄与してきたことが示されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説探索研究として行ってきたEBCIの事例研究を完了し、研究全体の仮説の導出を完了した。 仮説に基づいて研究計画全体の修正と実証のための事例選択を行い、中南米累積債務危機とアジア通貨危機を選択した。そして現在、そのうちの中南米累積債務危機について、資料収集と分析を行っている。中南米累積債務危機についての資料収集では、先行研究で明らかにされていない事項について補完できるよう、アメリカのIMFアーカイブスでの一次資料調査も行った。 当初の予定ではEBCIの事例研究を終え、仮説の他の事例への適用を始める時期であり、概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
中南米累積債務危機の研究を進め、その後アジア通貨危機の研究に進む予定である。 可能な限り7月までに日本で入手可能な先行研究及び一次資料の検討を行う。その上で、どのような資料が不足しているか確認し、夏季休暇及び冬期休暇を利用してアメリカで調査を行う。アメリカでは、国立公文書館及びIMFアーカイブに所蔵された資料を入手する予定である。
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