研究課題
本年度は,申請者が開発した超高速イメージング技術「Sequentially Timed All-optical Mapping Photography (STAMP)」の発表と,STAMPの重要なコンポーネントであるSpatial Mapping Deviceに関して新しいデザインの装置の開発,衝撃波(音波)を用いた培養細胞への照射実験を行った.本研究の目的は,細胞に対する音波の影響を調査するため,細胞内を伝播する衝撃波を可視化することである.しかしながら,これまでの技術では観察に適切な高速度撮影技術が存在しなかった.これに対し,従来の高速度カメラの速度を1000倍以上向上させる全光学的高速度カメラSTAMPを2014年夏に発表した.本技術はこれまでブラックボックス化されていた未知の現象を捉えることでプロセスの理解を深め,これまで断片化していた音波によるメカノバイオロジカルな知見を統合することに貢献し,将来的には音波による生体細胞・組織・器官の活性化や再生などの治療技術の確立に寄与することが期待される.そのほか,夏に発表したSTAMPではSpatial Mapping Deviceにて申請者が開発したスペクトラルイメージング手法を用いていが,本要素技術に新しいアイデアを組み込み,従来技術より多くの撮影枚数を実現する手法を提案・開発した.この技術はSTAMPのみならず,広くスペクトラルイメージング技術として用いることができ,内視鏡診断,食品の検査,天体観測など,多くの分野で用いられることが期待される.また,培養細胞を用いた衝撃波照射実験においては,HUVECの細胞間接着の一時的剥離,およびPC12の突起伸長促進をin-vitro実験にて確認した.これらの技術はドラッグデリバリや神経障害の低侵襲的な治療などに貢献することが期待される.
2: おおむね順調に進展している
目標とする細胞内衝撃波伝播の可視化を行い,現象を解析・理解するためには,原理実証でくみ上げた6枚の撮影を行うシステムでは性能が不足している.この撮影枚数を向上させるためには単に技術的な改善ではなく,手法の大幅な変更が必要であった.これに対し申請者は撮影枚数の向上が可能で,画質もさらに優れたものが取得できる新しいシステムを考案し,所属研究室の学生,東京大学天文学の研究チーム,理化学研究所の研究チームと共同で開発することに成功した.原理実証では白色光を用いたスペクトラルイメージングを行い,現在論文投稿準備中である.本手法をSTAMPに組み込むことで,当初の研究計画で挙げていた撮影枚数の大幅な向上を実現できる見込みである.
目標としている撮影条件である1 Gfpsから10 Tfpsという広い時間領域にて,20枚程度の撮影を行う超高速撮影を実現するよう,今後もSTAMPの改良・開発を続けてゆく.
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (4件)
Journal of Biomedical Optics
巻: 20 ページ: 017003
10.1117/1.JBO.20.1.017003
Optics Letters
巻: 40 ページ: 633-636
10.1364/OL.40.000633
自動車技術
巻: 69 ページ: 92-93
Nature Photonics
巻: 8 ページ: 695-700
10.1038/nphoton.2014.163
OPTICS & PHOTONICS NEWS
巻: December ページ: 59
巻: 39 ページ: 6942-6945
10.1364/OL.39.006942
セラミックス
巻: 49 ページ: 12
https://sites.google.com/site/keinakagawa6/
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/1364/
http://www.u-tokyo.ac.jp/en/utokyo-research/research-news/worlds-fastest-burst-mode-camera/
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/46/4.html