研究課題
今年度の活動はクライオスタットを用いた熱伝導率の低温測定の準備と,カリフォルニア工科大学での共同研究の実施である.ナノスケール熱伝導の理解のためには低温測定が必須であり, この測定のために27年度の前半を費やした.レーザーを用いた熱伝導測定装置であるTDTRに対してクライオスタットの導入を行い,Si超格子にGe粒子が埋め込まれた構造の熱伝導率測定を実現した.この結果に関しては国際誌へ投稿準備中である.27年度の後半はカリフォルニア工科大学のAustin Minnich研究室を訪問して,フォノン平均自由行程測定に有用であるレーザー装置BBFDTRに関する知識を得てきた.レーザーの不調やデータ解析の難しさから研究を完成させることはできなかったが,これから同様の装置を日本でも構築して引き続き研究を行う予定である.カリフォルニア工科大学へ渡航した経験と低温実験の準備と合わせてこれからの成果に期待したい.
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は,研究課題である“ナノスケール材料の熱物性測定と評価”を実現するために,クライオスタットによる低温測定の実現とカリフォルニア工科大学に渡航して新たなレーザー装置の取得を目指した.・クライオスタットを用いた低温測定の準備:半導体の熱キャリアであるフォノンの平均自由行程は,室温においては1um以下と短い場合が多く測定が困難であるが,サンプルを低温に冷却することでその長さは数umから数十umまで長くなる.そのため,クライオスタットを用いた熱伝導率測定の実現を試みた.室温では測定可能なサンプルであっても,クライオスタット中ではシグナルが安定せず,測定が不可能であった.原因を調べたところ,サンプル表面のAlコーティングが加熱レーザーによって破壊されているようであり,加熱光の波長を変更するかコーティング金属の変更が必要だと分かった.・カリフォルニア工科大学への渡航:近年になり,Broadband Frequency-domain thermoreflectance(BBFDTR)によるフォノン平均自由行程測定が報告され始めてきた[1].通常のFrequency-domain thermoreflectance(FDTR)装置はサンプル表面を周期加熱(数Hzから数kHzの範囲)し,その温度応答からサンプルの熱伝導率を測定する装置であるが,BBFDTRは更に高周波(~200MHz)まで加熱する装置である.高周波に加熱したデータからフォノン平均自由行程が得られるとされており,私の博士論文に有用だと考えたためにカリフォルニア工科大学のAustin Minnich研究室へ渡航して使い方及び作り方を学んできた.
前述したように,時間領域サーモリフレクタンス法装置(TDTR)にクライオスタットを設置した際にシグナルが安定しなかった.今後はシグナル強度を高めた状態での低温測定を可能にするために加熱光の波長を400 nmから800 nmに変更する予定である.上記の活動と平行して,BBFDTRの構築をすすめる.可能であればBBFDTRとTDTRの測定結果を比較して再現性を得る.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
AIP Advances
巻: 6 ページ: 015117
http://dx.doi.org/10.1063/1.4941354
Physical Review B
巻: 92 ページ: 094414
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