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2014 年度 実績報告書

DNA結合脂質を用いた細胞間コミュニケーションモデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 14J09147
研究機関東京大学

研究代表者

風山 祐輝  東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワードジャイアントベシクル / リポソーム / 人工細胞モデル / マイクロ流体デバイス / マイクロフルイディクス
研究実績の概要

本研究の目的は,DNA反応を利用して膜間で情報伝達を行う人工細胞系,つまり細胞間コミュニケーション機構のモデルの構築である.本研究目的を達成するためには,ジャイアント・ユニラメラ・ベシクル (GUV) の高精度な位置制御と,様々な設定条件でGUVの並列解析が可能な観察システムの構築が求められる.近年,マイクロピラーを用いた細胞のペアリング技術等が報告されているが,GUVに対する同技術の適用は,そのサイズ不均一性がデバイスの性能を下げる要因となっていた.そこで1年目では,サイズに関して不均一なジャイアントベシクル (GV) を導入するだけで,流路内でサイズ分離と捕捉,さらに外部溶液置換を伴う長期観察が可能なマイクロ流体デバイスの開発と評価を行った.
デバイス前段におけるサイズ分離には,Deterministic lateral displacement法(DLD法)を原理とする設計を適用した.デバイス後段にはGVの変形能を考慮した,底部間隙の狭いトラップ用ピラーを配置した.さらにこれらが定常的に機能するよう,流体力学的に安定な流れ場を形成できるためのデバイス全体の設計を最適化した.この設計により,均一サイズのGVを複数個並列空間配置でき,さらに捕捉後に溶液刺激を加えて形態変化を追跡することに成功した.捕捉されたGVの粒径の変動係数 (CV) は12%未満で,トラップに1対1対応するものが60個以上得られ,統計解析を効率よく進められることを示す.履歴も含めた連続計測が可能であることから,薬剤スクリーニングへの応用も期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究目的を達成するためには,スケールの異なる3つのレベル(分子レベル,人工細胞レベル,人工細胞集団レベル)で研究を展開し,それらをシステム化する必要がある.1年目は,人工細胞レベルと人工細胞集団レベルにおける研究展開として,人工細胞系の観察に特化したマイクロ流体デバイスの開発と,デバイス導入に適した人工細胞作製法の確立に取り組んだ.
当初,GUVの調製には均質性の高い単一膜が構成可能な遠心沈降法の利用を検討していた.しかし,遠心沈降法で調製したGUVを用いて行った流路導入試験において,マイクロピラー表面へのGUVの接着が観察された.マイクロピラー表面との相互作用が少ない調製法や膜組成を検討した結果,Tsumoto法を用いて調製したGVで,かつ負電荷を有する脂質分子である1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロールを添加した場合において良好な結果が得られた.そこで,3種類の標的粒径に対し,試作したマイクロ流体デバイスを用いて原理確認と性能評価を行った.結果,標的粒径12, 16, 20 μmに対してそれぞれ平均粒径13.8, 17.7, 22.1 μm, CVは5.3% (n = 154), 9.7% (n = 105), 11.8% (n = 67) を得た.これは,従来の分散液を直接顕微鏡観察する場合に課題であったサイズ不均一性の問題が解消され,均一サイズのGVに対し,統計解析に必要な観察数を確保しつつ顕微鏡下での光学的動態計測が可能であることを示唆している.
以上より,1年目に計画していた人工細胞レベルおよび人工細胞集団レベルにおける研究課題を達成できた.

今後の研究の推進方策

本研究成果により,これまでサイズに対する議論が不十分なまま進められることが多かったGVに対しても,マイクロ流体デバイスによるサイズ分離とアレイ化により,均一サイズで統計解析に必要な観測数を得て形態変化を並列解析可能となることを示した.今後,均一粒径のGVに対する浸透圧刺激の効果を精査することにより,GVの形態変化の様式に関する知見を得る.また,人工細胞間コミュニケーション系の構築と評価に向け,2個のGVのペアリングへとデバイス機能を拡張する.トラップ用ピラーを深さ方向に伸長し,トラップ内部にGVが2個捕捉されるように設計することで,2個のGVのペアリングへも容易に拡張可能である.
マイクロ流体デバイス内壁へGUVが吸着する問題に対して,脂質の袋状二分子膜を内壁表面で破裂展開する手法や脂質類似分子ポリマーによる被覆法などを用いて吸着抑制条件の検討を行う.これにより,遠心沈降法を用いて調製されたGUVについてもデバイス内部で安定にサイズ分離,捕捉される環境条件を見出す.
本システムを応用することで,相補的なDNA鎖導入によるペアリング後のGVの接合解消等の操作も実行可能であると考えている.この原理実証については,GVの膜へのDNA鎖導入を進めるにあたり,双頭極性型のDNA結合脂質の利用の前段階として,DNAの末端にコレステロールが標識された市販の脂質を用いる.それによりペアリング条件を最適化した後に,双頭極性型のDNA結合脂質を用いた細胞間コミュニケーション機構のモデルの構築に取り組む.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Giant Vesicle Formation of Novel Polymerizable Amphiphile Associated with Its Polymerization and Hydrolysis in Water2014

    • 著者名/発表者名
      T. Banno, Y. Kazayama, T. Toyota
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 43 ページ: 1707-1709

    • DOI

      10.1246/cl.140635

    • 査読あり
  • [学会発表] Reversible morphological control of tubulin-encapsulated giant-liposomes induced by change of hydrostatic pressure and temperature2014

    • 著者名/発表者名
      M. Hayashi, M. Nishiyama, Y. Kazayama, T. Toyota, K. Takiguchi
    • 学会等名
      第52回日本生物物理学会
    • 発表場所
      札幌, 北海道, 札幌コンベンションセンター
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
  • [備考] 東京大学駒場_豊田研_生命有機化学へようこそ

    • URL

      http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/toyota_lab/

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公開日: 2016-06-01  

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