現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的を達成するためには,スケールの異なる3つのレベル(分子レベル,人工細胞レベル,人工細胞集団レベル)で研究を展開し,それらをシステム化する必要がある.1年目は,人工細胞レベルと人工細胞集団レベルにおける研究展開として,人工細胞系の観察に特化したマイクロ流体デバイスの開発と,デバイス導入に適した人工細胞作製法の確立に取り組んだ. 当初,GUVの調製には均質性の高い単一膜が構成可能な遠心沈降法の利用を検討していた.しかし,遠心沈降法で調製したGUVを用いて行った流路導入試験において,マイクロピラー表面へのGUVの接着が観察された.マイクロピラー表面との相互作用が少ない調製法や膜組成を検討した結果,Tsumoto法を用いて調製したGVで,かつ負電荷を有する脂質分子である1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロールを添加した場合において良好な結果が得られた.そこで,3種類の標的粒径に対し,試作したマイクロ流体デバイスを用いて原理確認と性能評価を行った.結果,標的粒径12, 16, 20 μmに対してそれぞれ平均粒径13.8, 17.7, 22.1 μm, CVは5.3% (n = 154), 9.7% (n = 105), 11.8% (n = 67) を得た.これは,従来の分散液を直接顕微鏡観察する場合に課題であったサイズ不均一性の問題が解消され,均一サイズのGVに対し,統計解析に必要な観察数を確保しつつ顕微鏡下での光学的動態計測が可能であることを示唆している. 以上より,1年目に計画していた人工細胞レベルおよび人工細胞集団レベルにおける研究課題を達成できた.
|