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2015 年度 実績報告書

カーボンナノチューブ単一光子源の研究

研究課題

研究課題/領域番号 14J09159
研究機関東京大学

研究代表者

石井 晃博  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードカーボンナノチューブ / 単一光子 / 励起子 / フォトルミネッセンス
研究実績の概要

本研究では架橋カーボンナノチューブにおける励起子拡散を利用した単一光子生成を実証するため、Hanbury-Brown Twiss (HBT)セットアップを含む光学測定系を構築し、単一の架橋カーボンナノチューブからの発光について光子相関測定を実施した。本測定を実施する上で数十時間もの積算時間が必要となることが予測されたため、光学測定システム内に高精度なサンプルトラッキングの機構を導入し、時間経過によるサンプルのドリフトにサブミクロンの精度で追従できる仕組みを確立した。
その結果、これまでに複数のカーボンナノチューブについて単一光子が生成されていることを示すアンチバンチングが確認されており、本研究の主目的である室温・通信波長帯における単一光子生成が達成された。アンチバンチングの大きさについて励起パルスレーザーの強度と強い相関があることが確認され、この振る舞いはモンテカルロシミュレーションを用いて行った計算結果ともよく一致している。また、カーボンナノチューブのカイラリティの違いによってもアンチバンチングの大きさが異なることが確認されており、現在これがどのようなメカニズムによる性質なのか、励起子拡散長の違いに注目して解析を進めているところである。
今後は上に述べた架橋カーボンナノチューブにおける励起子拡散を利用した単一光子生成メカニズムの解析を進め、解釈がまとまり次第論文投稿を行う。その後は発展課題であるシリコン微小共振器との結合を見据えつつ、近年注目されているナノチューブに対する酸素ドーピングの手法を本研究に取り入れることを検討し、国内外の研究機関と共同で実験を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本実験では通信波長帯における単一光子検出を行うためノイズの大きいInGaAsのアバランシェフォトダイオードを用いており、そのため非常に長時間にわたる積算を行う必要があるため、その間のサンプルドリフトの問題をどのように解決するかが大きな課題であった。これに対し、本年度はサンプルのドリフトを極力低減させるよう光学素子の配置を工夫し、またナノチューブの劣化の原因である空気中の湿度をサンプルの周囲で低下させる方法を取り入れた。そのうえで、単一のカーボンナノチューブの発光を高精度にスキャンすることによりサブミクロンの精度でサンプルのドリフトに追従できるようになった。この仕組みを確立できたため、その後架橋カーボンナノチューブを用いた単一光子生成実験は順調に進行しており、期待通りの結果が集まりつつある。本実験の理論的な解釈についてもモンテカルロシミュレーションを基に定量的な議論が可能となっており、今後実験結果との整合性を比較することで、励起子拡散を用いた単一光子生成メカニズムについて詳細な性質が明らかになるものと思われる。

今後の研究の推進方策

架橋カーボンナノチューブにおける励起子拡散を利用した単一光子生成については詳細なメカニズムが解明される見通しが立っており、その後は、さらに高効率・高品質な単一光子生成を実現するための手法を試みる予定である。近年、カーボンナノチューブの表面に特定の種類のドーピングを行うことにより励起子のトラッピングサイトを生成する手法が報告され、その効果が実証されつつある。この方法は本研究課題とも深く関連しており、より高効率な単一光子生成を目指すため、そのような研究を行っている研究機関との共同研究を実施する計画である。また、この手法によるドーピングの実験は発光強度の弱いミセル化ナノチューブに対して行われていることから、その発光波長に合わせて設計したシリコン微小共振器との結合を試みて、発光増強及び単一光子生成効率の向上が可能であるか確認する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Exciton diffusion, end quenching, and exciton-exciton annihilation in individual air-suspended carbon nanotubes2015

    • 著者名/発表者名
      A. Ishii, M. Yoshida, Y. K. Kato
    • 学会等名
      Fundamental optical processes in semiconductors (FOPS)
    • 発表場所
      Breckenridge, USA
    • 年月日
      2015-08-02 – 2015-08-07
    • 国際学会
  • [学会発表] Exciton diffusion, end quenching, and exciton-exciton annihilation in individual air-suspended carbon nanotubes2015

    • 著者名/発表者名
      A. Ishii, M. Yoshida, Y. K. Kato
    • 学会等名
      6th Workshop on Nanotube Optics and Nanospectroscopy (WONTON15)
    • 発表場所
      Kloster Banz, Germany
    • 年月日
      2015-06-01 – 2015-06-04
    • 国際学会
  • [備考] 東京大学 工学系研究科 総合研究機構 加藤研究室

    • URL

      http://ykkato.t.u-tokyo.ac.jp/index.ja.html

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公開日: 2016-12-27  

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