研究実績の概要 |
1.多重蛍光ライブイメージングの条件検討 膜交通はRab GTPaseやSNAREなどの進化的に保存された分子に支えられており、それら分子のin vivoにおける動態と相互作用の可視化は本研究において非常に重要かつ大きなウエイトを占めている。多重蛍光観察を行うため、GFP, YFP, mRFP, TagRFPの単発現株および多重発現株を作製し、エンドサイトーシス追跡試薬FM4-64、ミトコンドリア染色試薬MitoTracker Orange、葉緑体クロロフィル自家蛍光のプロファイルを共焦点レーザー顕微鏡を用いて取得した。蛍光スペクトルと検出器を適切に組合わせるで、S/N比が高く、互いの蛍光を完全に分離できる条件を見出し、少なくとも5色の蛍光を同時に取得するタイムラプス観察を可能とした。 2. 膜融合因子SNAREの網羅的解析 SNAREは膜交通の最終段階において、輸送小胞と標的膜の融合を担っており、ゼニゴケSNAREを網羅的に解析した。 まず、ゼニゴケゲノムより34遺伝子のSNAREを同定し、RT-PCRにより器官特異的な発現を示すSNAREが存在することを明らかとした。典型的なSNAREに加え、C末端の膜貫通領域に加えN末端にミリストイル化を受ける新規分子構造を持つSNAREも見出した。さらにゼニゴケ細胞のオルガネラマーカーラインを整備・確立し、それらに蛍光タンパク質と融合したSNAREを導入し、個々のSNAREの細胞内局在を明らかにした。ERに6分子種, ゴルジ体に6分子種, TGNに6分子種, 液胞膜に3分子種, 細胞膜7分子種, 油体膜に2分子種が少なくとも存在した。 これらの結果より、膜交通経路は、1) 遺伝子重複とその後の変異の蓄積、2) 新規制御分子の獲得、3) 既存の分子ネットワークを他の経路に転用という進化的イベントに伴い多様化したという新しい仮説が考えられた。
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