研究課題
当該研究課題の前段階として重要な知見を得るため、水と有機溶媒との界面を反応場として用いる二相界面合成法により、二種類の一次元配位高分子を合成し、その物性や整列構造について研究を行った。ビス(ジチオレン)錯体を主鎖に持つ一次元配位高分子は、液液界面上で黒色の薄膜として合成された。この薄膜は酸化還元活性及び電気伝導性を示した。またSTMにより、薄膜内で錯体一次元鎖が規則正しく整列していることを明らかにした。もう一方のビス(ジピリナト)錯体を主鎖にもつ一次元配位高分子は、液液界面上で合成することで、オレンジ色の結晶となった。単結晶X線構造解析により、得られた結晶が目的の一次元配位高分子からなることが明らかとなった。また、結晶内で全ての一次元鎖が平行に整列していた。この結晶を有機溶媒中で超音波処理すると分散液となる。これをHOPG基板に散布しAFM測定を行ったところ、数μm長の配位高分子の単分子鎖が観測された。また、この分散液は様々な形で応用に用いることができる。例えば、カーボンナノチューブと混合してできた薄膜は高い熱電変換能を示した。さらに、分散液をITOなどの透明電極に塗布してできた薄膜は、緑色の光を効率的に電流へと変換した。これらの知見は、界面合成が種々の一次元配位高分子を整列合成できることを示した点で重要である。また、研究課題であるナノチューブの整列合成および応用の可能性を大きく広げるものであり、今後の研究推進に役立てることができる。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の最終目標は、金属錯体ナノチューブを界面上で整列合成し、これの電気伝導特性などを評価することにある。これまでの研究により、界面合成法は種々の一次元配位高分子をその鎖間相互作用に関わらず整列させることが明らかとなった。この知見はナノチューブが整列合成できることを大きく支持するものである。また、目的の金属錯体ナノチューブと類似の骨格を持つ一次元配位高分子を合成し、その電気伝導特性や酸化還元特性を明らかにした。これらはナノチューブの物性評価に役立てることができる。
配位子となるシクロパラフェニレン誘導体を合成する。これを溶液中で金属イオンと混合し、バルクのジチオレンπ共役ナノチューブを作製する。得られたナノチューブの組成及びジチオレン部位の形式酸化数をIRスペクトル、XPS、元素分析により決定する。構造はX線構造解析、TEMにより決定する。次に、二相界面合成法によりナノチューブの薄膜を合成し、溶液合成の場合と同様に同定を行う。X線構造解析、TEM及び電子線回折によりナノチューブ薄膜の二次構造を明らかにする。最後に、ナノチューブの薄膜をSi基板上に転写し、FETデバイスを構築する。電気伝導度測定・FET特性評価を行う。これにより、ジチオレンπ共役ナノチューブのナノ電子材料としてのポテンシャルを実証する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Chemical Science
巻: in press ページ: in press
10.1039/C5SC00273G
Dalton Transactions
10.1039/C5DT00724K
Chemical Society Reviews
10.1039/C5CS00081E
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