研究課題/領域番号 |
14J09288
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松岡 亮太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ナノシート / 界面 |
研究実績の概要 |
当該研究課題と関連した研究として,水と有機溶媒との界面あるいは水と気体の界面を反応場として用いる液相界面合成法により、炭素―炭素共有結合でつながれたπ共役有機ナノシート、グラフィジインを合成し,その構造について研究を行った。グラフィジインはグラフェンの同素体であり,sp炭素とsp2炭素からなる二次元ナノシートである。これまでいくつかの合成例があるが,いずれも銅箔上に厚膜として生成し,薄く結晶性のあるグラフィジインナノシートの合成は未達成であった。 ヘキサエチニルベンゼン(HEB, モノマー)のジクロロメタン溶液と銅(II)・ピリジン錯体(エチニル基二量化触媒)水溶液とで液液二相系を作成し,室温で静置したところ、界面に茶色のグラフィジイン薄膜が生成した。シリコン基板に転写した薄膜のAFM測定から、膜が平滑な表面を持つこと、また薄い膜が積み重なった層状構造をしていることが明らかになった。ナノシートの厚みは薄いところで6 nmであった。視野制限電子線回折(SAED)ではヘキサゴナルな対称性を持つ回折パターンが観測され、グラフィジイン多層膜の高い結晶性が示された。電子線回折から得られた二次元格子の大きさは0.96 nmであり、過去の計算結果や実験結果と良い一致を示す。さらに、回折スポットの消滅則をモデルによりシミュレーションすることで、グラフィジイン多層膜がABC型のスタッキング構造を有することを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は溶液中で合成困難な金属錯体ナノチューブを液相海面を駆使して合成し,ボトムアップ型ナノ材料の研究を実用化へと近づけることである。これまでの研究により,炭素ー炭素結合のような不可逆な結合形成に基づくナノ材料でも,液相界面を用いれば合成可能なことが明らかとなった。これは金属錯体ナノチューブを含め低次元ナノ材料全体の研究を強力に推進するものであり,当該研究課題にとって大きな進歩であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
配位子となるシクロパラフェニレン誘導体を合成する。これを溶液中で金属イオンと混合し、バルクのジチオレンπ共役ナノチューブを作製する。得られたナノチューブの組成及びジチオレン部位の形式酸化数をIRスペクトル、XPS、元素分析により決定する。構造はX線構造解析、TEMにより決定する。 また,グラフィジイン研究の推進方策として,気液界面を利用してより薄いグラフィジインナノシートの合成を目指す。
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