今年度は、これまでの研究で見過ごした点・論証不十分な点の回顧・訂正を兼ねて一次資料の収集と分析を中心に研究した。具体的には、 (1)2014年7月に博論のリサーチコロキアムを開催し、指導教員及び参加者からフィードバックを受けた上で博論の執筆計画を見なおした。 (2)データベース等を使用し、19世紀末から20世紀中葉までに中国大陸で発行された新聞・雑誌等に見られる燈謎に関する記事を収集した。集めた一次資料を元に、清末民国時代の約50年間の燈謎に関する文化活動をあらためて整理・分析した。修論に論述不十分な部分を訂正し、新しい資料に基づいて論文1「『燈謎』をめぐる文人意識の変化――謎話から得られる考察――」を作成した。2015年度に発行の『アジア地域文化研究』第11号に掲載確定。 (3)過去の論文で解決できなかった問題の一つとして、明末の燈謎スタイルと清末民国時代の主流的なものとの継承性に関しては、明末に多く出版された日用類書(日常生活全般の知識を部門別に分類、編輯した百科事典のような書籍)を一次資料に加え、考察した。代表的な日用類書九種を使用し、燈謎の属する部門が内容全体における位置づけ、燈謎の分類及び収録作品の異同などを比較し、明末の社会生活における燈謎に対する認識の変容を明らかにするとともに、清代の謎集と比較し、日用類書が後代の燈謎にいかなる影響を与えたかを検討した。論文2「明末の日用類書から見る燈謎」を作成し、『中国―社会と文化―』第三十号に掲載確定。 (4)2015年3月上旬に台湾に行き、研究に必要な文献を収集した。近代以降台湾における燈謎社団の活動と政党による文化政策との関係について、現在論文を執筆中である。
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