研究課題/領域番号 |
14J09291
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤崎 薫 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 素粒子実験 / 液体アルゴン / 2相型検出器 |
研究実績の概要 |
近年の暗黒物質直接探索では、特に低質量領域で相互矛盾する実験結果が共存し、混沌とした現状となっている。このような状況下では、異なる媒質・手法・背景事象環境下での多角的な検証が重要となる。 本研究では、小型で高感度な2相型検出器を製作し未だ検証されていないアルゴンによる低質量領域の探索を行う。この領域に感度を持つためには、十分な光検出効率と閾値付近での背景事象分離能力が必要となる。 これまで液体1相の小型検出器にて高い検出効率(7.3pes/keVee)を達成していたが、大型・2相型化により光量が減る事を見据え、小型検出器にて検出光量の向上を行った。液体アルゴン用の新しい高QE PMTを個別の低温基礎特性試験を踏まえた上で検出器に導入し、結果としてアルゴンでの世界最高レベルの検出効率(~10pes/keVee)を達成した。 さらに、これを踏まえて高い検出効率を維持する2相型プロトタイプ検出器の設計製作に着手した。これまでの2相型の結果から、検出器の内蔵物の遮光により検出光量が大きく減少する事が判明したため、10nmの透明電極膜Indium Tin Oxide(ITO)を石英ライトガイドに成膜したものを電場形成に用いた。これにより、これまで遮蔽体となっていたステンレスGridを減らせ、結果として検出光量が大幅に向上し、またGrid間の不感領域も抑えられた事により背景事象分離能力を高めることに成功した。窒素不純物除去による光量のさらなる増加も見込まれており、これを達成するための窒素除去フィルター導入も完了している。 これらの検出効率向上により、明確な背景事象分離能力の向上が確認されており、定量評価に向け追加のデータ取得を行う予定である。また分離能力向上のために利用する予定の新型VUV MPPCの開発結果として、低温環境下での液体アルゴン蛍光直接検出の検証が行え、実用の目処が立ってきている現状である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の大きな課題であった光検出効率は潜在的に世界最高レベルを達成し、懸念していた2相型プロトタイプ検出器においてもそれを維持する。また窒素不純物除去による光量のさらなる向上が見込まれ、検出効率に一定の目処がたっている。 背景事象分離能力に関しても、検出光率の向上・検出器構造の見直しにより明確に向上が見られ、分離能力の定量評価とそれに悪影響を及ぼす問題の洗い出しを行う準備が整った。またこれら課題を切り分け、理解・改善を行うためのシミュレーション構築も進んでいる現状である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度構築した大光量2相型検出器のデータにより背景事象分離能力の定量化と課題の洗い出しを行う。この結果をシミュレーションにフィードバックし、問題の理解と改善を測る。このシミュレーションを用いて低質量領域に感度を持つ本実験用検出器の設計・製作を行う。その後、この検出器を用いた地上本実験にて検出器性能評価を行う。その結果を基に地下施設への移行・運用に目処をつけていく。
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