プランク天文衛星による最新の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測は、多くのインフレーション模型を排除することに成功した。驚くべきことに、最も単純な2乗や4乗ポテンシャルによるカオティック・インフレーション模型は観測的に排除されることとなった。 この観測により、より好まれる模型は拡張した重力相互作用を含むものである。そこで私はヒッグスボソンが重力的に非ミニマルな微分結合を持つインフレーション模型において、観測データと無矛盾に曲率揺らぎと重力波揺らぎが生成されることを示した。この模型が宇宙進化を通してユニタリー性を満たす可能性についても明らかにした。 最も単純な重力理論の拡張であるR2インフレーション模型が、観測値の中心を指し示している。したがって、この模型は近年急速に国際的な注目を浴びている。私はこの模型でのインフレーション後の宇宙再加熱期において、パラメタ共振現象による時空揺らぎの成長について詳細に調べた。その結果、フリードマン宇宙の中では揺らぎがあまり成長せず、局在するようなソリトンは生成されないことを明らかにした。 R2インフレーション模型を超重力理論へと拡張した模型について、宇宙再加熱過程がどのように起こるか調べた。その結果、主なインフラトンの崩壊チャンネルは量子アノマリーによって引き起こされることを明らかにした。さらにはグラビティーノ質量についても許容される範囲を示した。 上記の模型は不安定自由度の出てこない最も一般的な二階微分スカラー・テンソル重力理論に含まれる。しかし、2014年に高階微分を含むが不安定自由度の出ない理論が提唱されて、定説が覆された。私はこの理論においてVainstein半径と呼ばれるスカラー重力遮蔽が働く距離の内側であっても、星などの静的球対称な重力源の内側で遮蔽機構が十全に働かないことを明らかにした。成果を論文誌と国内外の学会で発表した。
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